おひとり様
「ひとり旅」「ひとり焼き肉」「ひとりキャンプ」など、他人に気兼ねなく楽しみたい人が急増しています。各業界がこぞって「おひとり様向け商品」を発表するなか、神奈川県綾瀬市の町工場で気になる商品2020を発見しました。
高級素材カーボン100%で遠赤外線効果
この四角い板は『Sumi Ita』(炭板)と呼ばれるカーボン製の調理器具。食パン1枚が焼けるサイズで持ち運びも簡単。直火やIT機器で加熱すると、炭火焼きと同等の遠赤外線を発する優れもの。油なしで簡単も調理でき、パンや肉、魚、野菜との相性がとてもいい優れもの。
ソロキャンプ、ひとり焼き肉
驚きの食感が味わえるこの『Sumi Ita』を使用してみると、普段とは違う「豊かな食感」を堪能する事ができました。市販のフライパンや鉄板では味わえないサクサク感やしっとり感、「ソロキャンプ」や「ひとり焼き肉」、「ひとり飲み」にもうってつけのアイテムです。
実際にアウトドアで使ってみた
取材記者が自宅キッチンのIHで肉を焼き、秦野市の弘法山※標高235㍍の山頂へ登り、富士山と秦野盆地が一望できる展望台で『Sumi Ita』を堪能してきました。
料理業界最強の「黒」
この黒い『Sumi Ita』は、「カーボン」(炭素)の塊からできています。優れた熱伝導性と遠赤外線効果、電気を通しやすく冷めにくい性質から「金の延べ棒(金塊)」を作るための型や、半導体の製造工程に不可欠だといいます。近年は金属類の代替え品としての需要も高まっています。
3つのサイズで展開
このカーボンの特長を「調理器具」に応用したのが『Sumi Ita』には
①食パンサイズ(W150mm×D150mm×H23mm)
②2~3人用サイズ(W200mm×D200mm×H23mm)
③ステーキサイズ(食パン2枚サイズ)(W180mm×D300mm×H23mm)
以上、3つのサイズ展開があります。開発した旭工業有限会社(嶋知之社長、従業員28人・神奈川県綾瀬市)が、1956(昭和31)年の創業以来初の「一般消費者向け商品」として製造販売をはじめました。
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発売から1年がたった2020年は、自社の社員が直接お宅まで配送する宅配サービスも開始するといいます(神奈川県綾瀬市内のみ)。
開発秘話
2012年、BBQが趣味という社長の嶋知之さんが、自社で扱うカーボンで「肉が美味しく焼けないか」と考えました。普段は部品に使うカーボンを板状にして肉を焼くと「確かに美味しかった」といいます。そのままでは肉が板にくっついてしまうため「この時はそこで試作が終わってしまった」といいます。
1年がたったある日、参加した展示会で知り合ったコーティング業者の話から、フッ素コーティングと耐熱コーティングを思いつき試作を再開しました。
すると「素人ながらも美味しく焼けることがわかった」といいます。多忙を極める社内で社長の嶋さんがひとり「みんなの邪魔にならないようにしながら」試作をすすめ、ようやくできた試作品をFacebookにアップしたところ予想外の反響が待っていました。
「ふるさと納税に」
ほどなく、Facebookの書き込みを見た綾瀬市役所の工業振興担当者から嶋さんのもとに、綾瀬市が行う「ふるさと納税」の返礼品にこの鉄板を起用したいとのオファーが舞い込み、ほどなく返礼品として提供することが決まりました。
町工場の挑戦はまだまだ続く
2019年に事業継承をした旭工業は、今後、調理器具を主軸とする一般向けの「ものづくり」にも力を入れる方針を固めています。
嶋さんは「はじめの頃は納期に追われる社員のみんなに迷惑がられていましたが、最近はようやく社内の風向きも変わりました。みんなが協力してくれるようになったことも嬉しい」
「私たちの仕事で喜んでいただけることが何よりも励みになります」とも話しています。「カーボンは高級素材なので値段は少し高めですが、辛抱強く製品の良さを伝えていきたい。(綾瀬市内に限りますが)購入のご連絡を頂ければ、私達が直接ご自宅までお届けしてお客様との関係を築いていけたら」と期待を膨らませていました。【了】