創業140年、国登録有形文化財の「松竹館」を本館とする「三河屋旅館」が、事業を継承した藤田観光(株)による改修工事を経て10月2日、「箱根小涌園 三河屋旅館」として営業を再開した。さらなる小涌谷周辺の活性化と箱根の発展につながると関係者は期待を寄せる。
三河屋旅館は1883(明治16)年に創業。中国革命の父と言われた孫文や画家の竹久夢二、歌人の与謝野晶子など、多くの文人墨客が宿泊した老舗旅館。約40種3万株のサツキやツツジが植えられている庭園「蓬莱園」など、地域観光発展に寄与してきた一面もあったが、今年春に閉館した。
藤田観光(株)は1948(昭和23)年に旅館「箱根小涌園」(現・貴賓館)を開業した。建設当時の上棟式の写真には、近隣の三河屋旅館の法被を着た職人が多数写っていたことから、両社の親交が伺える。「縁があって当社が引継ぎ、この度新スタートを迎えることができた。三河屋旅館の思いと古き良き建物の魅力を継承し、箱根観光の活性化に寄与していきたい」と藤田観光(株)の担当者は話している。
海外、シニア向け居室も
国登録有形文化財の本館は、木造2階一部平屋建、鉄板葺・銅板葺及び一部スレート葺。建築面積は1014平方メートルを誇る。客室は本館に4室、別館に露天風呂付の客室5室と二間続きのスイートタイプ3室、スタンダードタイプ9室があり、離れには専用露天風呂付で趣の異なる和室4室がある。
改修工事では建物の外観はそのままに、防音や断熱効果を向上させる内サッシの導入、浴槽などの水回りの改修、高齢者や外国人に使いやすいベッドスタイルに変更した。また、名物料理の提供など、新しい魅力が増えた。