2023年1月14日(土)、鶴嶺公民館とトヨタ自動車株式会社の共催で「科学のびっくり箱!なぜなにレクチャー」が鶴嶺公民館で開催されました。
子どもの理科離れを懸念。科学の原理を体験から学んでほしい。
今回、鶴嶺公民館で行われたのは「手作りハイブリッドカー(発電と回生を学ぶ)」。クルマの模型に組み込んだモーターが発電機として充電することや蓄えた電気の力で走る仕組みを学ぶことができます。
参加したのは抽選で選ばれた男女合わせて12人の小学生と付き添いの保護者。公民館によれば、定員12人に対し40人以上の申込みがあったそう。なかには鶴嶺公民館から離れた東海岸小学校や梅田小学校に通っている子も参加しているとのことで、この教室の人気の高さがうかがえます。
「子どもの理科離れが叫ばれており、何とかモノづくりを経験させてあげたいとの思いで企画しました。普段使っている製品のことや科学の原理を理解するには、実際に目で見て、触れることがとても大切。でも、今はどんな製品も中身がブラックボックス化されていて仕組みが分かりにくいと感じます。だからこそ、こうしてプロに教えてもらえる機会はとても貴重です」と公民館職員の中邨(なかむら)さん。
一流のエンジニアが子どもの興味を刺激して、科学の原理を伝える。
教室は、ハイブリッドカーには欠かせないモーターと発電機の仕組みを学ぶことからスタートしました。次々と質問を投げかける講師に子どもたちも元気よく手を挙げて答えていきます。ときには子どもらしい意外な答えが飛び出し、思わず大人も大笑い。
言葉とスライド画面の解説だけでは少し難しいかなと感じるポイントもありましたが、そんな時は講師が製作した実験装置が登場。こうした工夫で子どもたちの理解が進み、より興味を刺激しているようでした。目で見ることのできない電気の仕組みを理解するには、やはり体験してみることが一番なんでしょうね。
「今はスマホの影響もあってか、子どもたちの関心がソフトウェア(プログラム)に向いていると感じるけど、モノづくりの楽しさも知って欲しい」と講師の田坂さん。
お父さん世代には懐かしいプラモデルづくりのよう。モノづくりの楽しさを体験する。
仕組みを学んだ後は、いよいよお待ちかねのハイブリッドカーづくり。工作を楽しみながら、さらに学びを深めます。キットにはプラスチック製の車のパーツのほかに、モーターや配線が同封されており、一見するとプラモデルのよう。筆者(お父さん世代)が子どもの頃はプラモデルが身近にあったので、「子どもたちにとっては手慣れたものだろう」と思いきや、部品を切り離すためのニッパーに苦戦する子どもがチラホラ。そんな様子を見かねて、つい横からアドバイスするプラモデル世代の保護者の姿。
「この科学工作教室で初めてニッパーを触る子は多いです。今はプラモデルを作る機会も減ったようで、作ったとしても工具を使わずに完成できるキットも多い。モノづくりのために、正しく工具を使うことも学んで欲しいです」とモノづくりに対する思いを語ってくれたのは講師の佐藤さん。
途中の配線作業はこのキットで一番の難関。配線をうまく繋げず模型が動かなかったり、逆に取り付けて正しく動かせなかったり。そんな参加者には本職がエンジニアの講師がマンツーマンでサポート。講師に助けられながら、全員が完成を目指します。工作を見守っていた小学4年生の保護者からは「子どもが実験やプラモデル作りが好きで参加しました。モーターへの配線が難しかったようですが、楽しそうに工作していました。ものづくりのプロに教えていただき理科の勉強にもなったと思います」との声。
工作開始から30分が過ぎるころには完成も間近の様子。最後の仕上げに“TOYOTA”のシールを車体に貼り付け「出来たー!」と大きな歓声をあげる子どもたち。早速、会場内に設置された特設コースで手作りハイブリッドカーを走らせる姿はとても満足そう。
「モーターを使って動くおもちゃを作るのが好きで参加しました。作り慣れていたから、お父さんにあまり手伝ってもらわずに完成させることができました」と小学4年生の男の子は得意げな顔です。
子どもたちの遊ぶ様子を見ながら「坂道を下るときに(動力の)スイッチを切ると豆電球が光るでしょ。これが回生の仕組みだよ」とすかさず講師から解説が飛んでいました。
今回使用されたキットは4年生で使われる理科の教材。実は、豆電球を使って回生の仕組みが分かりやすいように、講師によって独自の改良が加えられています。模型づくりを楽しみ、完成品で遊びながら科学の原理を経験してもらう、そんな工夫が込められたキットになっていました。
最後に講師の田坂さんが「今日の科学工作教室をきっかけに、将来、モノづくりに関わってくれるようになると嬉しいです。一緒に未来の乗り物を作りましょう」と子どもたちに呼び掛けていました。
体験の積み重ねが、未来の科学者を育てるのかもしれない。
この「科学のびっくり箱!なぜなにレクチャー」はモノづくりに携わるトヨタ自動車(株)が社会貢献活動の一環で1996年から全国各地で開催している大人気の科学工作教室。10種類あるプログラムは、いずれも車の研究開発やデザインの専門知識を活かして独自に開発されたもの。トヨタ自動車(株)に所属するエンジニアが中心になって構成されたトヨタ技術会の有志メンバーが講師となり、子どもたちに科学とモノづくりの楽しさ、大切さを伝えています。
講師の一人から「茅ヶ崎の子どもたちはとても積極的で元気。今日は盛り上がりましたね」との声。小学5年生の保護者も「子どもが工作好き。興味があることを伸ばしてあげたくて参加しました。将来モノづくりに関わってくれるといいですね」と言います。今日の参加者の中には、こうした科学教室に何度か参加された方がいたようで、中邨さんも「今後もこうした科学教室を定期的に開催して、経験の機会を作っていきたい」と想いを抱いているそう。
科学の原理を実際に体験できる機会が今後のモノづくりには大切なのかもしれません。こうしたイベントが積み重なり、盛り上がっていくと、将来、茅ヶ崎出身の科学者や宇宙飛行士がまた誕生!そんなことを思わず期待してしまった科学工作教室でした。
Information
■茅ヶ崎市鶴嶺公民館
https://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/kyouiku/kominkan/tsurumine/index.html
■科学のびっくり箱!なぜなにレクチャー
https://www.toyota.co.jp/nazenani/#rec