「食を通じて市制100周年を知ってもらいたい」
小学生の頃の給食で好きなメニューは何でしたか?揚げパンやソフト麺など色んなメニューが思い浮かびますよね。多くの人たちにとって、給食は思い出の1ページになっていることでしょう。
- 川崎市では市内の子どもたちに市制100周年を知ってもらおうと、今年6月の最終週で学校給食の特別献立として「『かわさきそだち』のなしゼリー」が提供されました!
今回はメニューの企画から提供までに携わった、川崎市教育委員会事務局健康給食推進室の小田貴子さんにお話を伺いました。
給食で定番のゼリーと多摩川梨のコラボ
「給食でゼリー」の話が持ち上がったのは2023年の5月頃。市制100周年事業を担当する川崎市役所のシティプロモーション推進室から、「給食で何か発信できないか」と相談を受けたことがきっかけ。当初牛乳パックのデザインを100周年らしいものにするという意見も出たそうですが、議論を重ねる中で「定期的に提供しているゼリーのパッケージを変えるのはどうか」という意見が出ました。デザートなら子どもも喜ぶし良いかも!ということで意見がまとまり、ゼリーの製造を手掛ける事業者さんに話を持ち掛けました。
ただゼリーのパッケージを変えるだけでなく「食べた時にも地元を感じてほしい」ということで、「多摩川梨(多摩川流域で収穫されている梨の総称)」を使うことに。
実は傷などがあり一般販売に適さない規格外の梨は皮ごとすりつぶして「多摩川梨ピューレ」に加工し、市内の和菓子店と共同開発してまんじゅうやようかんとして商品化しているそう。JAセレサ川崎で、SDGsの取り組みの一環として行っているこのアイデアを利用し、試作品作りを2023年の夏から開始しました。
「最初の試作品では、ゼリーの見た目に透明感がなく、食べるのを敬遠されないか心配でした。そこで果肉をさらに細かくし、果汁の比率も工夫することで理想の味と見た目に近づけ、食感にもこだわりました」
試行錯誤を繰り返して完成した「なしゼリー」は、2024年6月の最終週に市立小学校114校、同中学校52校、特別支援学校4校で提供しました。
給食に出された当日、JAセレサ川崎のスタッフと市職員は宿河原小学校を訪問。子どもたちに多摩川梨の長い歴史や作り方などを動画やスライドで紹介。その話を聞き、実際にゼリーを食べた子どもたちは、「また食べたい」「農家さんの苦労が分かった」と喜んでいたそう。
「奈良茶飯」で歴史を学ぶきっかけに
「奈良茶飯」とは?
米に栗、大豆、小豆、アワなどを入れ、お茶で炊いた炊き込みご飯。もともとは奈良の東大寺や興福寺などでお坊さんが食べていた料理が、川崎に伝わったそう。
江戸時代には東海道五十三次の宿場町であった川崎宿は多くの人でにぎわっていました。川崎宿にあった茶屋「万年屋」では、シジミのみそ汁や奈良漬けとともに提供され旅人などに大人気のメニューに。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に登場し、全国的に有名になりました。
東海道川崎宿の起立400周年記念でランチョンマットのプレゼント
川崎市では十数年前から、子どもたちに食べて川崎の歴史を感じてもらおうと、川崎で最も有名な郷土料理「奈良茶飯」を毎年11月に提供しています。
川崎区役所のまちづくり推進部では昨年、東海道川崎宿が起立400周年を迎えたことを記念し、各企業と連携し様々なプロジェクトを企画。後世に川崎宿の歴史を伝えていくためにも、起立400年を学びの機会にしたいと、恒例の「奈良茶飯」の提供に加え、東海道五十三次のイラストをもとにデザインされた紙製のランチョンマットを作成。市内全校の小学校と一部中学校の子どもたち一人ひとりに配布しました。
「小学校高学年や中学校は授業でちょうど歴史の授業で学んでいる時期。興味を持ってもらうきっかけになれば」
新メニューもお楽しみに!
今後、給食の新メニューについては、まだ模索中とのこと。「市制100周年のその先も、食を通じて地域の歴史や文化を子どもたちに伝える機会を作りたい。SDGsなど持続可能なまちづくりにつながるような取り組みが出来たら」と、前向きに検討しているそう。
川崎市の学校給食にどんなアイデアが生かされていくのか、これからも目が離せません!