2025年3月8日~5月6日の「川崎大空襲記録展」でお披露目
戦後80年――。川崎市市制100周年記念事業として、川崎市平和館では「川崎大空襲」の戦災写真のカラー化プロジェクトを進めています。3月8日(土)から同館で開催する「戦後80年 川崎大空襲記録展~戦時下の市民生活と川崎大空襲~」でお披露目されます。期間は5月6日(火)まで。
- ひそかに撮られた戦災(市役所3階から明治産業方面を撮影)
- カラー化された写真
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現況写真
罹災者10万人超の川崎大空襲
戦局が悪化する中、迎えた昭和20(1945)年4月15日未明。B-29爆撃機が川崎の街に来襲し、焼夷弾12,748発(1,072t)などを投下。翌16日午前5時ごろまで火災が続き、川崎市の中心部は市役所などを残して焼け野原に。被害は全半焼壊家屋33,361戸、同工場等287、罹災者は10万人を超え、川崎市内の空襲による死者約1,000人、負傷者約15,000人の大半は、この空襲によるものだったと記録されています。
AIと証言により、カラー化されたのは9枚
川崎市平和館は、この「川崎大空襲」の記録と共に、「平和」と「戦争」の両面から考えてもらうきっかけにしてほしいと、毎年「川崎大空襲記録展」を開催しています。2025年、同展で初めて企画されたのが、戦災を写した写真のカラー化です。
川崎大空襲のカラー化プロジェクトは、昨年夏ごろにスタートしました。「10年前だとAI技術が今ほど進歩していない。10年後だと体験された方の証言が取れない可能性が高い。戦後80年、市制100周年の今だからできた」と企画の意図を語る北村憲司館長。複数のソフトウェアを用いて、人工知能(AI)で白黒写真を自動着色。空襲体験者で証言活動を行っている川崎区在住の小川一夫さん(96)の記憶や体験談をヒアリングしながら写真の色彩を補正して進めてきました。
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市役所本庁舎展望ロビーで空襲当時の思いを語る小川さん
今回、カラー化された写真は計9枚。「戦争の被害がわかる写真を中心に選びました」と北村館長。当時は、戦局の悪化による配給制など軍事統制中だったこともあり、市井の人たちが街中の写真を簡単に撮ることができなかったそうです。そのため、空襲前後の川崎のまちを記録した写真は、あったとしても空襲で焼けてしまい、残された写真はほとんどありません。そうした数少ない空襲直後の写真や、終戦直後の写真の中から、市役所3階から明治産業(現在はソリッドスクエア)方面を撮影したものや、市役所付近の焼け跡、焼け跡に建つバラック小屋などの写真がカラー化されました。
- 市役所付近の焼け跡(平和通りから市役所方面を撮影)
- カラー化された写真
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現況写真
カラー化の作業を進める中で、空襲を避けるために白と赤茶色で偽装された市役所、防空壕を掘った際に湧き出た水をかき出した水で生えた緑の草など、AIの学習機能ではわかりえないことでも小川さんの記憶と証言によって初めてわかったこともあるそうです。「AIでは、がれきなのか土なのか、わからないこともある。見てきた人でないとわからない細かいところを小川さんの記憶でカラー化できた。人の思い、建物の被害状況などよりリアルなものができた」と北村館長は振り返ります。
- 焼け跡に建つバラック小屋(渡田新町から市役所方面を撮影)
- カラー化された写真
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現況写真
北村館長「平和を考える機会に」
現代を生きている我々が、過去の戦争、空襲の記憶を現実のものとして感じられるようにと、体験者の心象にとどめている風景をリアルに復元した今回の取り組み。同館では、川崎大空襲や原爆などの戦争や平和の問題だけでなく、環境破壊や人権、貧困といった「非平和」をテーマにした展示も行っています。「80年前の大空襲は川崎市の100年の歩みの一つ。展示を見て記憶を継承してもらい、未来に向けて平和について考えるきっかけになってほしい。今、自分ができることを考えてもらう機会になれば」と北村館長は話しています。
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川崎市平和館