横須賀市武在住の元洋画家・山室紀元さん(89歳)が初の写真展を10月8日(水)に「佐島なぎさの丘自治会館」(佐島の丘2の15の17)で開催する。山室さんは3年ほど前、手の自由が利かなくなり、筆を置いた。今回展示されるのは、かつて絵の制作時、参考資料に撮っていた風景写真のフィルムを現像した23点。約30年前に訪れた長野県・上高地で撮影した風景で、絵描きの視点で切り取った美しい作品群となっている。
山室さんは中学生時代から絵に興味を持っていたが、大学を卒業後は就職。しかし「何か物足りない」。そんな思いから一念発起し、名のある画家に師事。35歳で独立して以来、風景画を中心に抽象画や半抽象画を描いてきた。神奈川県立近代美術館に作品が収蔵されたり、銀座などで30回ほど個展を開いたりするなど、長年プロとしての道を歩んできた。過去には横須賀市長賞も受賞している。しかし、3年前に左手が不自由になり、絵筆を握ることが困難になった。それでも「何かやらないと、じっとしていられない」との思いから、かつて絵の参考資料として撮り溜めていたフィルム写真に目を向けた。
フィルムをデータ化し、自宅のプリンターで大きく引き伸ばしたところ、写真家ではない自身が撮ったとは思えないほどの出来栄えに驚いた。周囲からも「写真もうまいじゃないか」と勧められ、普段から同自治会館に通っていたこともあり、今回の写真展開催が決まった。作品は、約30年前に上高地の田代湿原付近で撮影された風景が中心でサイズはA4~A3。撮影時期が5月頃だったこともあり、残雪と新芽、枯れ木が共存する独特の光景を精密に描写している。
かくしゃくたる身体
山室さんは今でも車を運転したり、近所のスーパーで食材を買い自ら料理をしたり、認知症予防によいとされる脚部を鍛えようとリハビリデイサロンで汗を流したりと、90歳を前に明朗快活な生活を送る。それでも「元気の秘訣はわからない」と謙遜して語る。山室さんは「これからの人生でもう一度写真展を開催できるか分からない。ぜひ足を運んで89歳の心を込めた作品をご覧ください」と話している。
会期は1日のみで午前10時から午後0時30分。入場無料。作品購入も可能(当日山室さんへ)。