農業用水として江戸時代に開削され、中原区など川崎市内にまたがる「二ヶ領用水」が国登録記念物に登録される見通しとなった。川崎市内では禅寺丸柿に続く2件目で、遺跡関係では初。市は登録を見据え、解説板の設置など普及に向けた取り組みを検討していきたいとしている。
対象は9.2キロ
15日、国の文化審議会から国登録記念物に登録するよう答申を受けたのは、全長約18キロの二ヶ領用水のうち、市が所有管理する9・2キロ。正式な登録時期は未定だが、国登録記念物に登録されると解説板など普及や啓発のための費用の半額が国から補助される。
二ヶ領用水とは
二ヶ領用水は、1611年に徳川家康の命を受け小泉次大夫が開削した農業用水。「稲毛米」など市内の米の生産量を飛躍的に伸ばした要因ともなった。引水は水田だけでなく畑などにも行われ、昭和初期には中原区は全国有数の桃の産地として繁栄。市内で工業化が進むと、二ヶ領用水は工場などに配水する工業用水として利用された。現在は、主に散策や花見など市民に自然や憩いを提供する環境用水として親しまれており、多くの市民団体が水路の保全や歴史の継承などに取り組んでいる。
「誇りに思う」
「桃の里」を後世に伝えようと活動する二ヶ領用水中原桃の会の津脇梅子さんは、今回の登録について「会発足当時はドブ川だった。活動に携ってきた者として励みになる」と喜ぶ。二ヶ領用水を街づくりに生かそうと協議する二ヶ領用水総合基本計画推進会議委員の萩原ひとみさんは「これまで関係者と熱心に議論してきた。(登録される見通しに)誇りに思う」と胸を張った。
市は今後、二ヶ領用水の歴史などを市民に広く周知していくとともに、老木化する桜や桃など用水周辺の環境整備も検討していきたい考え。登録対象外の約8・8Kmの二ヶ領用水についても、市は所有管理する国や県などに働きかけながら、全長約18キロの登録をめざす考えも示している。