感染症対策の中で、日々の健康に関心を寄せる人が増えている。2020年東京都医師会は、喫煙と罹患率の関係性に警鐘を鳴らした。喫煙は肺に長期的で回復しにくいダメージを与え、肺炎のリスクを約3倍に高めるという。
藤沢・医師会×歯科医師会×薬剤師会
正しい認識を奪うニコチン
タバコの依存性は酒や麻薬よりも高いといわれる。
医師の原田久さんは「タバコが体に悪いことを知らない喫煙者はいない。目の前に死の危険があっても手を出してしまうことは、勇気ではなく無謀」と説明する。「吸えないストレスの方が体に悪いという人もいるが、この正しい認識を奪うこと自体がニコチンの特徴」と話す。
ストレス解消は錯覚
ニコチンは脳の快楽物質に直接働きかけるため、「手軽にストレスを解消できる」と「錯覚しやすい」という。
代価は大きく「食事」「趣味」「家族や友人との交流」など他の快楽を得る手段を奪ってしまう。得られる快楽も次第に麻痺し、吸っていないと平常心を保てなくなる危険があるのだ。
原田さんは「タバコによって得られる快楽は、実は平常時より低く、火傷をした場所を冷やすと気持ちいい、という感覚に近い」と警鐘を鳴らし「タバコにだまされないで。失うものは多く、得るものはない」と呼びかける。
歯と口にも影響する3大有害物質
200種類以上の有害物質が含まれるというタバコ。
歯科医師の雨宮啓さんは「ニコチン、タール(ヤニ)、一酸化炭素は、歯や口にダメージを与える3大有害物質。歯周病を悪化させ、口腔がんなどのリスクを高める」という。
タバコを吸うと歯にヤニが付くが、これは煙に含まれるタール。汚れや細菌はタールに付着しやすく、歯周病菌や虫歯菌にとって、それは隠れやすく棲みやすい環境になってしまう。
ニコチンで免疫力低下
歯を失う原因となる歯周病を悪化させる主犯格は「ニコチン」。
雨宮さんは「タバコ中毒に陥れる有害物質。免疫機能を低下させるので、口の中の抵抗力が低下し、歯周病の攻撃を防ぐことができなくなる。タバコを吸う人は歯周病が悪化しやすく、治療の効果も上がりにくい」と説明。
また喫煙は、口腔がんや咽頭がんなどのリスクを上昇させる。「歯科医院でも禁煙相談を受け付けているので、相談してほしい」と話した。
正しい知識で依存症治療を
「禁煙を達成するために大切なのは、正しい知識と適切な治療」と呼びかけるのは薬剤師の関根寿樹さん。現在国内で禁煙補助薬として扱われているニコチンガムやパッチは、少量のニコチンを体内供給することで、徐々に「タバコを吸いたい」という気持ちを失わせる。
医師の処方箋で手に入れるものと、薬局の禁煙相談で販売されるものがある。関根さんは「薬局でも薬を取り扱っているところがあるので相談して」と呼びかける。
子どもたちに「吸わせない」
「喫煙・受動喫煙対策には小中学校からの教育も大切。子どもから言われると吸わなくなる親もいる。家族で禁煙を支えて」と関根さん。薬剤師は小中学校で「お薬教室」などを開き、タバコの害を子どもに伝える機会も多い。
関根さんは「日本では受動喫煙により1万5千人が死亡し、超過医療費は3200億円にも上るという報告もある。未来を担う子どもたちに禁煙や受動喫煙の害について知ってもらえるよう努力したい」と語った。
世界禁煙デー
世界保健機構(WHO)が、喫煙しないことが一般的な社会習慣となることを目指し5月31日を「世界禁煙デー」に定めた。厚生労働省も世界禁煙デーに始まる1週間を「禁煙週間」に定め、様々な啓発を行っている。
藤沢市では禁煙無料相談を実施中。まずは電話で連絡を。
まだ喫煙されている方は、この機会に禁煙相談を受けてはいかが。