放水作業を行う消防士やシャベルで石を撒く工事現場の作業員、勢いよく荷物を運ぶ配達員、真剣な眼差しで鍋を振るうシェフー。
様々な職業の人がイキイキと働く一瞬の姿を切り取った、求人広告誌の表紙写真のようなこの1枚。実はプロのモデルではなく、横浜市中区にあるユニフォームの会社「ダイイチ」で働く社員さんたちによる集合写真!しかも、ほぼ合成なしの一発撮り!!というから驚きです。
ユニフォームを扱う会社がなぜ?こんな面白い写真、どうやって撮影したの?!
気になるこの撮影会の様子を、記者が密着レポートしました(取材日/2021年6月7日)
「ユニフォームの魅力を伝えたい」
カメラマンは写真家の杉山雅彦さん。静岡県でフォトスタジオを主宰し、飲食、医療、建築、製造まで、様々な業種で働く人たちを撮影してきた人物です。合成をなるべくせず、実際に演じてもらい、劇的な瞬間を撮る作品がまるで日本アニメーションの一場面のようなことから「ジャパニメーションフォト」と名付け、インパクトのある写真を撮り続けています。
ダイイチでは、自社製品であるユニフォームの魅力を視覚化したいと考えていて、その中で「働く人たちをヒーローのように見せてくれる杉山さんの作品を見て、一目でこれだと思った」と花本社長は話します。
ちなみに杉山さんの撮った写真をホームページやチラシ、ポスターなどに使った会社では「職場が楽しそう!」と求人応募数が5倍に増えたこともあるそう。
撮影会スタート!
撮影は〝横浜の企業″をイメージしたみなとみらいの景色を背景にできる場所、結婚式場「グランドオリエンタルみなとみらい」の屋上で行われました。準備途中に雨がぱらついたのでドキドキしましたが、撮影が始まった午後からは青空に。杉山さんの写真は色の修正をしないので、自然の青空も重要な舞台セットの一つなんです。
「みなさんの演技力にかかっています。自分がヒーローになったつもりで楽しんで下さい!」と杉山さんが挨拶。続いて花本社長も「今日は恥ずかしさを取り払って撮影に挑みましょう!!」と力強く宣言。皆さん初めての体験に不安と期待が入り混じるなか、撮影がスタートしました。
大量のフラッシュを使うことで、「非現実感」や「働く人のキラキラ感」がでるそうです。
事前に決めるのは撮影場所と、「働く人をヒーローっぽく撮りたい」「ユニフォームを着て働く人の周りでダイイチの社員が応援する感じで」という企業イメージにあわせたコンセプトだけ。あとは現場で作り上げていくのが〝劇場型写真″の極意。アドリブも大歓迎!とはいえ、全員素人なので、立ち位置やポーズ、目線など、杉山さん自ら演技指導していきます。
まずは働く人たちチームから
ユニフォームを着た前列の9人から調整していきます。
どの方もかなり似合っています。そしてなりきってる(笑)
着ると途端にその職業の人に見えてしまうユニフォームの力って、やっぱりすごい!
花本社長も率先してアイデア出しに加わります。撮影会はこの「みんなで作り上げていく一体感」も魅力の一つ。学生時代の文化祭のノリに近いかも。
ダイイチ社員チームも加わる
前列の働く人たちチームのポーズが決まり、何度かリハーサル撮影を行った後に、後列のダイイチ社員チームが加わります。
現場のテンションを上げるため、90年代のJポップなど、アップテンポでノリノリの曲がBGMに。「表情ハデに、めっちゃ笑って!」「そのホースの水の出方、サイコー!!」。現場の雰囲気を和ませたり、笑わせたり、演者のテンションを上げたり…劇場型と言われるだけあって、まるで映画監督のよう。杉山さん自身が誰よりも楽しみ、社員と一緒にこの写真を作り上げていくという姿勢が見えました。
いよいよ撮影本番!!奇跡の1枚を求めて
既にこの時点で、開始から2時間近くが経過。炎天下の中の撮影なので皆さんの体力が心配ですが、実はここからが本番です。
「いきますよ~!!1、2、3、パッ!!」
バシャ!!ガシャン!!!
撮影に参加していない社員も、裏方として活躍。1回撮影するごとに飛び散るフライパンの中身やハンガー、石などを拾い集めていました。
「お〜今のはいい感じだったのでは?」と思っても、ものを飛ばしたり、ジャンプをしたり…。総勢約30人のタイミングをピタッと合わせるのはなかなか難しい!撮影の様子を見ながら小道具などを追加し、よりよい1枚が撮れるように、微調整を加えていきます。
休憩中は交流タイム
「この表情いいね!」「もうちょっと腕を上げた方がいいかも」。休憩の前になるとモニターに続々と人が集まってきます。
みなさん、総務課やレンタル部門、倉庫など普段は別々の部署にいる社員たちだそう。久々に会う同僚との会話を楽しんだり、初めましての挨拶もあり、社員交流の場になっていました。
社員の思い出になる
今回参加したのは、20代から60代まで年齢も部署も様々でしたが、同じ目的に向かって頑張る同志として、社員の一体感が生まれていました。これは一生の思い出になりそうですね!
やるならとことん楽しむ!
最高齢で参加した佐藤忠志さん(写真右)は「いや〜長時間で大変だったけどね、社員みんなと撮影できて、すごく楽しかったですよ」
なりきるのが一番!
警備員と板前のユニフォームがとっても似合っていますね!
働くってかっこいい!ユニフォームで輝く写真を1枚に
こうして苦労の末、出来上がったのが、冒頭の写真です。どうですか?ユニフォームに身をまとった一人ひとりが生き生きと輝く写真。レポートを読んでから見ると、また面白いですよね。ダイイチのユニフォームにかける情熱まで、ビシバシと伝わってくるようです。
3時間に及ぶ撮影も無事終了!「炎天下のなか、本当にお疲れ様でした!」と杉山さん。撮影会の高揚感と疲れを吹き飛ばすほどの達成感で、みんなの笑顔が輝いていました。