辻堂などで39年間にわたり歴史をつむぎ、2021年3月に惜しまれつつ閉店したライブバー「ステージコーチ」。この店を茅ケ崎駅南口で再開させようと、元町在住のミュージシャン・片山誠史さん(44)が奔走しています。
「ステージコーチ」は1982年、誠史さんの父でベーシストの片山さとしさんが藤沢本町で開店しました。9坪ほどの店内は演奏者だけで埋まってしまう広さでしたが、カントリーミュージック専門のコンセプトが人気を博し、店の外で演奏を聞くファンも多かったといいます。
数年後に店舗を辻堂へ移転。2016年に誠史さんがオーナーを引き継ぎました。アメリカンな店舗の雰囲気も愛され、常連客も多かったのですが、建物の老朽化に伴って閉店を余儀なくされました。
「39年の歴史」生かす
折しも音楽業界は、新型コロナによって大打撃を受けていました。長年愛されたライブハウスやライブバーが次々となくなる状況を目の当たりにし、誠史さんはこう考えたといいます。「湘南の地から、生演奏ができる場所を減らしてはいけない」
ライブバーはファンと共に長年かけて作り上げる場所であり、「ゼロから作り上げるのは大変」と誠史さん。しかしステージコーチは、店舗こそ無くなったものの、39年の歴史があります。
「この歴史を生かそう」。再開へ向けて、湘南地域を軸に物件を探し始めました。
「音楽と出会うきっかけに」
閉店が決まり、再出発を決めてから、約1年をかけてたどり着いたのが茅ヶ崎の地。音楽文化がしっかりと根付くこのまちでの再開に、「自分が盛り上げなければ」という気負いはありません。「地域の中に、音楽と出会うきっかけがひとつでも増えることが大切だと思います」と笑顔を見せます。
しかしコロナ下においては、これまで以上に運営が難しいのも事実。防音対策はもちろん、換気対策のための設備投資も重要です。そこで誠史さんは7月8日からクラウドファンディングを実施。共感の輪が広がり、多くの支援が集まりました。
「気軽に入って、素敵な音楽と出会える。そんなお店にしたい」。誠史さんは目を輝かせます。