高度成長期の昭和30年代、多くのものがプラスチックに代わりました。例えば「おもちゃ」と言えばそれまではブリキでしたが、プラスチックやセルロイド、ビニール製になりました。そのタイミングで射出成形によるプラスチック部品の製造へ進出したのが、八王子市石川町にある東新プラスチック株式会社(現)です。プラスチック製造は保険業などに従事する会社の一部の事業として始めたもので、2021年で節目の60年になります。
「合成樹脂射出成形加工業者」と言います。東新プラスチックは現在、プラスチック部品およそ100アイテムを月間900ロット、数にして300万個以上を製造しています。工場内に所狭しと配置された25台の機器が忙しく稼働しています。
ただ、髙橋社長によると「最高売上はバブル期」で、バブル崩壊前後は仕事を海外に移管され苦しい時期があり、海外進出も検討したそうです。それは先代がメーカー志向だったから、と振り返ります。会社は当時まだ「イヤフォン」だった時代に「ヘッドフォン」の仕事を請け負っていました。その技術について大手メーカーから高い評価を受けていたこともあったそうです。しかし、町工場で作るそれらはコストがかさみ経営の先行きは不透明でした。
- そこで、ちょうどその頃、事業を承継した髙橋社長は方向転換をします。「コツコツと部品を作る会社でいい。成形から付加価値を付けていけば。選択と集中でしたね」
金型が支給されて射出成形だけをするという従来型をやめ、図面から自ら金型を起こし成形するという一貫したシステムに変更しました。
- 「今のお客様に貢献し、一緒に伸びていきたい」。およそ20年前のこと、髙橋社長の決断で事業は発展し2013年には暁町から現在の工場へ拠点を移転しました。
現在社員は45人。25台の機器は国家資格である「成形技能士」7人により動いています。「理論と経験。両方が相まって良い製品が作られる」。できた製品は社内の複数の検査工程を経て出荷されます。
プラスチックだから安くできる。髙橋社長の考えはそうではない。「この環境、この管理体制で作られる」品質に自信を持っている。「今の仕事のやり方でできる製品を『欲しい』と思ってくれるお客さんを増やしたいですね」