【介護TOPIC】将来の暮らし方を考える

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【介護TOPIC】将来の暮らし方を考える
永野浩子さん

「人生100年時代」といわれる現代。50歳を過ぎてもようやく折り返し地点だ。高齢期を健康に過ごすために何が必要なのか、高齢者の住生活の向上を目的に活動している、一般社団法人高齢者住宅協会の永野浩子さん、正田克成さんに話を聞いた。

住み続ける?住み替える?

将来の暮らしや住まいを考えるとき、まず何から始めればよいのでしょうか。

永野「まずは『自分の家を見つめなおす』『住んでいる所の環境を知る』という2つをしてみましょう。今は元気でも、やがて加齢による体力低下が起きて今の住まいや環境にも変化が求められます。リタイアに差しかかった頃には、ご自宅は老朽化が進んできます。建て替えるかリフォームか、便利なエリアへ住み替える手もあります。考えるきっかけにしてください」

具体的にはどのようなことですか。

永野「国は、高齢期の健康で快適な暮らしのために「住まいの改修ガイドライン」というのを初めて定めました。その配慮項目として「温熱環境」「外出のしやすさ」「トイレ・浴室の利用しやすさ」など8項目が挙げられていますが、中でも気を付けたいのは「温熱環境」です。

気温の変化で血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こるヒートショックで亡くなる方は、今や交通事故で亡くなる方より多いと言われています。お風呂で起こることが多いですが、居間や寝室、脱衣所など室温に差があれば要注意です」

正田「外出するとき、玄関から外に出る際に、段差でつまづき転んでしまうというケースも多くあります。「転倒」が原因で骨折をしてしまい介護が必要な生活になってしまったり、打ちどころが悪ければ最悪のケースも考えられます。玄関の階段や家の中の段差にも注意してください」

正田克成さん

「住んでいる所の環境を把握する」というのはどういうことでしょうか。

永野「年を取ると何かと支援が必要です。重いものを持ち上げたり運んだり、買い物も大変になってきます。まずは『何かあったとき、ご自宅の周りに15分くらいで来てくれる人がいるか』を考えてください。人とのつながりは大事で『子どもがいる場合、同居していたり1時間くらいで来てくれるか』『友人がいたり、地域の活動に参加しているか』といったことも大事です」

正田「もし最期を迎えるとなると『訪問で来てくれるお医者さんはいるか』『介護事業所はあるか』など地域資源が近くにあるかはとても大切になるので調べてください。特に小規模多機能居宅介護は最期を迎えるときにとても役に立つとケアマネージャーさんも言っていますね」

永野「そうしたことが整備されている地域は最期までご自宅で過ごしやすい地域です。最期まで過ごせる自宅になるよう整えていきましょう」成り行き任せもってのほか

自宅を改修したい場合に注意することはありますか。

永野「『温熱環境』は窓を二重サッシにするなど改修したり、浴室暖房設備などを取り入れるとヒートショックなどの事故を予防できます。冬場は室内の空気は窓で冷やされます。冷たい空気は重いので、暖房を入れても足元は冷たいまま。窓の断熱性を改善すれば足元も快適になります。

玄関の段差などは、手すりを付けるのが定番です。今は工事をしなくても、置き型の手すりというものが多く発売されていて、玄関の階段部分やトイレなど必要なところに必要なサポートができるのでおすすめです」

正田「室内でも和室と洋室の間に段差があり転倒の原因になります。お金があればバリアフリーのリフォームが安心ですが、今は100円ショップで段差解消のグッズが売っているので、うまく利用したいですね」

より安心で便利な場所へ住み替えたいという人もいると思います。

永野「そうですね。例えば、元気なうちは駅前が便利だからと安易に選びやすいですが、少し立ち止まって考えてほしい。人生は長いですから『病気になったら』『介護が必要になったら』など先のことをイメージして住み替えを考えてください。今は高齢者向けの住宅も数多く整備されています。バリアフリーが施され、何かあったらスタッフが駆けつけてくれる。選択肢の一つになると思います」

永野・正田「高齢期の住まい方、暮らし方を考えるとき、10年後、20年後、30年後と将来の自分や家族をイメージすることをおすすめしています。一番やってはいけないのは『何もせず成り行き任せ』になること。夫婦や家族と話す機会を持ちましょう」

住所

神奈川県藤沢市

公開日:2022-01-01

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