自分の家は自分で壊すべき?
八王子市館町にある森川謹司税理士事務所の森川さんは、「節税したいと思う方は多いと思いますが、ほとんどの場合は失敗します」と話します。いかに相続税を低く抑えるかを考えるあまり、結果的に損をしてしまう恐れも。
「不動産に関しては生前に処分して、現金で残すのが一番」
不動産ではなく現金を残すメリットは
(1)現金なら公平に分けられる
(2)現金を自分のために使うことができる
(3)空き家問題が未然に防げるなどがあります。
(1)現金なら公平に分けられる
たとえ相続人同士の仲が良くても、「その配偶者はまた別の意見を持っていることもある」と指摘します。「不動産は公平な分割が難しいので1番揉めやすい。お金なら公平に分けることができます。不動産を相続対象にすること自体が危険です」。
なお、昔は1つの不動産を共有持ち分とするケースも多かったそうですが、森川さんは「必ず避けるべき」と指摘します。
(2)現金を自分のために使うことができる
医療やサービスの充実した老人ホームや、駅に近い平坦な場所に引っ越したり、あるいは趣味にお金を使ったりと、自分の生活の質を高めることにつながります。
- 「突き詰めると、資産を残すから相続トラブルが発生するんです。なければそもそもトラブルが発生しません。自分のために使いましょう」
(3)空き家問題が未然に防げる
誰も住まずに土地活用もされなかった場合は空き家になります。そして、解体する場合には相続人全員の同意が必要です。これが、孫世代にまで相続された場合は、相続人と連絡がつかなくなる恐れも。実際にこういった空き家は少なくないのです。
- 「だから、自分の家は自分の代で取り壊すべきです」
資産の現金化を
「相続税対策として借金をしてアパートを建てたりしますが、節税を優先して行う借入も、残った借金は相続人が返していかなければなりません」。売却などで現金化することにより、自由に使うことができ、相続の際にも分割が容易になります。
現金のみでも相続税は発生しますが、例えば、配偶者と子ども2人の場合、基礎控除3000万円+法定相続人×600万円で、4800万円までは非課税となります。
不動産の相続税評価額は、固定資産税評価額のおおむね1・1倍程度です。固定資産税の納税通知書などで判断することができます。
「ご自身の財産を把握する事が相続対策に繋がります」