病気などで適切なコミュニケーションが取れず、自分の気持ちを周囲の人に伝えられなくなったときのため、元気なうちから備えておくことは大切です。
今までの人生を振り返りつつ、万が一に備え、治療や介護、葬儀などこれから先どのように過ごしたいかという希望をはじめ、家族への伝言、連絡すべき知人のリストなどを記しておくためのエンディングノート。
横浜市では18区それぞれで、独自のエンディングノートを作成しています。その中で、神奈川区役所は神奈川区版のエンディングノート「ライフデザインノート」(A4判22ページ)をもっと多くの人に使ってもらおうと、講演などを行っています。今回は、その模様を密着取材してきました!
ライフデザインノートの普及啓発講演会
2022年8月24日、神奈川区役所でライフデザインノートの普及啓発講演会が行われ、区内在住・在勤の方30人ほどが参加されました。講師は、高齢者のおひとりさまやその予備軍に後見人制度や遺言、お墓などの相談に乗るなど、自分らしい終活を支援しているNPO法人人生まるごと支援の理事長を務める三国浩晃さん。
社会背景として、日本は高齢化社会の加速に伴い2025年には高齢者の5人に1人が認知症を発症するといわれています。神奈川区内で現在、認知症の高齢者は推定8000人。13年後の2035年には1万人超になることが見込まれています。このようなことを踏まえ、
- 「認知症になる前に、将来について決めておくためライフデザインノートを活用してほしい」と呼びかけます。
キーワードは「おひとりさま」
講演では、1人暮らしの高齢者「おひとりさま」というキーワードを軸に、参加者が自分ごととして捉えられるよう人生で亡くなるまでの健康状態を細分化し、
元気→介護→認知症→終末期→看取り
といった状態での対応をシミュレーション。
また、死→葬式→納骨→遺品整理→相続
といった死後についても考え、それぞれの状態での選択肢や自分の希望、対応は誰に任せるか、「成年後見制度」や「尊厳死宣言書」など事前にできる対策などを解説。その流れに合わせて、ライフデザインノートが対応するページなどを示しながら、準備の大切さを伝えていました。
ライフデザインノートの利用
三国さんは「ライフデザインノートは、成年後見制度について(14ページ)法定後見制度と任意後見制度の詳細まで解説しており、周りの人の存在を踏まえた上で自分がどうしたいかを考えられるように促しているなど、市内18区のエンディングノートの中でも分かりやすい内容・デザインになっていると思います。
またこのライフデザインノートを書いたうえで、託す・書いた内容を伝えられる人物「キーパーソン」は誰かを考えて、キーパーソンと良好な関係づくりをしてほしいですね」と呼びかけます。
参加者の声
普及啓発講演会に参加されたS.Tさん(80代・男性)とS.Yさん(60代女性)にも、講演会後に話を聞きました。
S.Tさんは、終活をやらなくてはと思っていた時に講演会の開催を知り参加。「何も分からないような状態になる認知症は恐ろしいので、ライフデザインノートを活用する大切さを感じました。成年後見制度についても理解を深められたので、学んだことを妻にも共有したい」と話していました。
介護の仕事に就いているS.Yさんは、ライフデザインノートを職場の利用者の方にも勧められるようにと受講。お母さまも介護中とのことで受講され、「自分と残される家族のために書くべきだと感じました。老後についてどう考えているかなどを家族間で話すきっかけにもなると思います」とライフデザインノートの重要性を学ばれていました。
- 神奈川区では、ライフデザインノートの説明や書き方について、講座を行っています。詳細は神奈川区福祉保健センター 高齢・障害支援課(045-411-7110)まで。
また下記施設では無料配布をしています。
・神奈川区役所高齢・障害支援課(別館3階301窓口)
・反町地域ケアプラザ
・神之木地域ケアプラザ
・菅田地域ケアプラザ
・片倉三枚地域ケアプラザ
・新子安地域ケアプラザ
・沢渡三ツ沢地域ケアプラザ
・六角橋地域ケアプラザ
・特別養護老人ホーム 若竹苑
・神奈川区社会福祉協議会