【目次】
●心洗われる山伏修行
●動物にゆかり 本堂に馬頭観音
●七沢の緑に包まれた「ふじ棚樹木葬」「十一面観音永代桜葬」
●大切にしていた人形を、大切に供養
●一般の人でも参加できる季節の行事
●公共機関でのアクセス
心洗われる山伏修行
七沢温泉バス停から徒歩数分
温泉の情緒と紅葉や新緑が美しい厚木の七沢に、個性的なお寺があるのをご存知だろうか。七沢温泉のバス停を降り奥へと歩くと、天台宗・七沢観音寺にたどり着く。ここは山伏修行(修験道)のお寺としても名高い。
修験道はこの地域では明治期まで盛んだったが、当時の政府の方針をうけ下火になった経緯がある。同寺ではその伝統を伝え、誰もが参加できるよう門戸を開いている。
山中での祈り、滝行も
修行では山中の拝所を巡る山駆けや滝修行がある。参加者が着る白装束は、人が亡くなった時に、というイメージの人も多いだろう。その通り、この姿は生まれ変わる、やり直す意味の白なのだ。
林慈照住職は語る。「人は何度でもやり直せる、という前向きな思想が根底にあります。自分の力だけで生まれ変わるのには限界があるから、神仏の助けを得るのです。山々を歩くのは、草木や川や石などあらゆるところに仏性(ぶっしょう)があるから。修行を通じ様々な物事に感謝できるようになるんです」
毎年9月に「採灯護摩」
山伏修行は、女性や若い世代の参加者も多く、清々しい体験に「やってよかった」という声も多い。毎年9月の採灯護摩では、地元の間伐材を焚きあげ、密教の修法での儀式が行われる。今年の予定は公式ホームページ参照を。
読経の後には素足での火渡りが行われ、境内の参詣者もこの日は修行の一部を体感することができる。
動物にゆかり 本堂に馬頭観音
動物にゆかりのあると言われるのは、馬や様々な動物たちを救うとされる「馬頭観世音菩薩」を祀っているから。七沢城主だった、上杉定正公の愛馬「月影」を供養した由来もある。昔は境内の祭りで草競馬も恒例だった。当時の馬を描いた絵馬の数々も残され、博物館に所蔵されている。
一羽のオカメインコとの出会い
参拝者の中には犬を抱く人や、肩にインコを載せる人もいる。実は住職が根っからの動物好きで、オカメインコの飼い主なのだ。11年前、住職は浅草の寺院で働いていた。冬のある日、夫婦で雷門通りを歩いていると、道端に丸くうずくまる何かを見つけた。鳥だと気づいてすぐに帽子に入れて持ち帰り、保護した。発見時には尻尾の毛もなくなっていたが、優しく接するうちに、不思議と幸運とも言える出来事が相次いだという。
「動物に心から感謝し、お世話することによって、不思議と得るものが多かった」と林住職。飼えなくなった鳥などの里親になったり、飼育の相談に乗ることも。けがをしていたカラスを保護し、林道に捨てられていたニワトリを保護して小屋も作った。林住職が11年前に保護したインコ「ラッキー」は今も一緒に暮らしている。
ペットは家族。飼い主の思い受け止める
家族同然のペットが亡くなった後は、ちゃんと供養をしてあげたいーーー住職のこうした思いもあって、境内には動物合祀墓がある。納骨料は2万円で、フェレットなどの小さな動物や、ヤギ、大型犬などの納骨もでき、命日供養も受け付けている。また、迷子になった鳥のための祈祷をはじめ、病となった動物のため、宗派を問わず檀家であるなしに関わらず平癒祈願もしてもらえる。長年にわたり、飼い主たちの様々な思いを受け止め、時には支えてきた。
七沢の緑に包まれた「ふじ棚樹木葬」「十一面観音永代桜葬」
境内は八重桜の名所としても知られ、例年4月中旬が見ごろ。境内には藤棚を見上げるような「ふじ棚樹木葬」があり、満開の桜が広がる「十一面観音永代桜葬」も。石のテーブルでお弁当を広げ、故人とのひと時を過ごすのもいい。近くの日帰り温泉に立ち寄ったり、県立自然公園を散策したり、お参りが観光のひと時になる。
樹木葬の中には、一定年数で合葬となる所もあるが、ここでは期限なく個別や合祀で管理される。「後継者に負担をかけたくない」「夫婦で一緒に」と生前に申し込む人も多いとか。管理費は無料、見学は電話予約で案内や説明もしてくれる。お彼岸供養とお盆供養は、檀家でなくても宗旨や宗派を問わず塔婆が申し込める。
大切にしていた人形を、大切に供養
七沢観音寺では、大切にしていた人形の供養も行っている。年間を通して受け付け、大きさに関わらず、一体千円。ぬいぐるみや、子どもが大きくなって出さなくなったお雛様や五月人形、仏像や、位牌、仏壇の供養もできる。
一般の人でも参加できる季節の行事
1月
元旦~3日 新年開運護摩
19日 初馬頭・動物祈願祭
2月
3日 節分会・日数心経・星祭り
3月
19日 馬頭観音大祭・採灯護摩供
彼岸中日 春期彼岸会
4月
19日~23日 はなまつり・甘茶接待
8月
13日 合同盂蘭盆会供養
9月
彼岸中日 秋季彼岸会
第三土曜日 入峰修行・採灯護摩・火渡り・子ども山伏
12月
十九日・終い馬頭本尊護摩供
31日除夜祭・護摩法要・星祭り
公共機関でのアクセス
厚木バスセンターから「七沢」行きまたは「広沢寺温泉」行きに乗車。「七沢温泉入口」バス停徒歩5分ほど。伊勢原駅からも「七沢」行きバスで同バス停下車。愛甲石田駅からは「七沢病院」行きで「七沢病院下」で降り、徒歩20分ほど。