江之浦の海に着想を得て、台湾の女神<媽祖>を通じて“世界への祈り”を紡ぐ物語。能楽師・片山九郎右衛門が挑む新作能「媽祖」(まそ)。京都観世会館で好評を博した初演(2022年4月)を経て、2023年1月15日(日)、小田原三の丸ホールの劇場空間を生かした”劇場版”として新たに生まれ変わる。
新作能「媽祖」ー劇場版ー プロモーション映像
新作能「媽祖」とは
新作能の構想は海を超えた友情から
航海・漁業の守護神として、台湾や中国沿岸部を中心に東アジアで広く信仰をされている道教の女神・媽祖。日本にも、かの有名な横浜媽祖廟のほか、各地に媽祖を祀る廟や神社が点在しており、現在では、航海のみならずあらゆる事柄の守護神とされている。
- 片山九郎右衛門が20年前に台湾の友から託された「媽祖を能に」という願いが、新型コロナウイルスの影響で公演機会が失われる中で心に蘇ったという。
小田原ゆかりの新作能 江之浦の海から着想
新作能「媽祖」は、片山九郎右衛門氏が2018年に小田原の「江之浦測候所」の1周年記念特別公演 新作能「利休ー江之浦」に立ったことを機に、生まれた作品。
- 江之浦測候所は2017年に現代美術作家・杉本博司氏により建設され、野外の石舞台や光学硝子舞台をはじめ、ギャラリー棟、茶室、庭園などから構成され、冬至と夏至、そして春分、秋分と、相模湾から昇る太陽の運行に基づき作られた施設もある。
小田原市江之浦の海を背にした、雄大な水平線と刻々と変わる海面や空の表情が作品づくりのイメージとなったという。能楽の新しい可能性を探りながら、クラウドファンディングを経て、2022年4月に京都観世会館にて初演。小田原三の丸ホールの1周年記念事業として、作品誕生の契機となった地・小田原での劇場版公演が決まった。
装いも新たに、能楽堂版から劇場版へと展開する新作能
この江之浦測候所を舞台に、写真家・鈴木心氏が撮影した本格的なプロモーション映像が話題となったが、今回小田原公演のためにさらに世界的な現代美術作家・杉本博司氏(小田原ぶるさと大使)映像監修による新たな撮影を行っている。劇場空間を生かしたこれまでにない新感覚の作品に注目が集まっている。
片山九郎右衛門さん・野村萬斎さん メッセージ
本企画のプレトーク「片山九郎右衛門×玉岡かおる×やなぎみわ」
公演に先立ち、2022年11月1日(火)には、同作の発起人である企画・演出・出演の片山九郎右衛門氏(能楽師)、原作者・玉岡かおる氏(小説家)が登場。さらに、本作の主人公“媽祖”信仰が根付く「台湾」の文化にも精通されている、やなぎみわ氏(美術作家・舞台演出家)も登場。
プレトークでは、台湾で演劇作品を上演した経験のある、やなぎみわ氏が、事例紹介や、野外演劇の歴史、能楽とのかかわり等を話されたほか、片山九郎右衛門氏が、今回の公演の経緯や新たな試み、使用するお面や衣裳へのこだわりについて語った。また、原作・台本を担当される玉岡かおる氏により、今回の劇場版に向けて現在、作品の書き直しをされている事などが明かされ、市内外から集ったプレトーク参加者が、公演への期待を膨らませていた。
<外郎博物館>では、公演で使用される能面の展示も
初演から新作能「媽祖」に心を寄せている、外郎藤右衛門氏が所蔵する能面<千里眼>が、公演に先立ち、2022年12月1日(木)~2023年1月10日(火)、公開される。<千里眼>は、先を見通すという意味を持ち、主人公・媽祖が従える登場人物の一人。2022年4月の初演にあわせて新しく制作されたこの<千里眼>は、同じくこの公演に登場する<順風耳(じゅんぷうじ)>が使用する、片山家に桃山時代から代々伝わる能面の写しである。公演と合わせて、ぜひご覧いただきたい。
【能面<千里眼>の展示】
日時:2022年12月1日(木)~2023年1月10日(火)10:00~17:00
休:水曜・第3木曜、12/31~1/1
会場:外郎博物館(ういろう本店内 小田原市本町1-13-17)
出演者
媽祖|まそ 観世流能楽師・片山 九郎右衛門 / 企画・演出・出演
京都市生まれ。初代より京都で活動し、江戸時代には禁裏御所の御能を勤めた名跡を継ぐ。父(故 片山幽雪)、祖母(故 四世京舞井上流家元 井上八千代)、そして実姉(五世 井上八千代)はいずれも人間国宝。海外公演や、薪能、ホール能などの能楽堂以外での公演の企画プロデュースや能のシリーズ絵本の制作を手掛け、能楽の普及を図る。公益社団法人京都観世会会長、公益財団法人片山家能楽・京舞保存財団理事長。
明神|みょうじん 狂言方和泉流能楽師・野村 萬斎
映像監修| 現代美術作家/小田原ふるさと大使・杉本博司
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