宮前区の伝統的な枝ものとして知られる『馬絹の花桃』が、桃の節句ひなまつりを前に、出荷のピークを迎えた。日本中に届けられた花桃が華を添え、各地の家庭に笑顔の花を咲かせた。
江戸時代から花の産地として知られていた馬絹地区は、生け花の材料として花きを出荷する文化が根付いたと言われている。花き農家たちは発展を目指し、長年にわたり努力と工夫を重ねてきた。今では「かながわ名産品」に選ばれるなど『馬絹の花桃』は全国的に評価されている。
花桃は蕾がまだ固い時期に枝を伐採し、枝を束ね、温度と湿度を高くした「室」と呼ばれる暗室に入れ、2から3分咲きになったところで出荷。3月上旬に開花するように、蕾の色や固さを見て、室に入れる日数を調節している。
『かわさきマイスター』の花き農家・吉田義一さんは、50年以上改良に取り組んできた。出荷準備期間を確保するため伐採時期を早めた早咲き品種の開発や、従来、温度が安定しやすい地下にあった「室」を地上に移すなど、作業の軽労化、効率化に注力。中でも枝を束ねる技術は関東屈指と言われている。吉田さんは「馬絹地区の伝統的な産業として、これからも受け継いでもらいたい」と話している。