初夏の頃は紫陽花。裏山の散策路(山あじさい小径(こみち))では、射干(しゃが)の群生が咲き終わると、山紫陽花や額紫陽花が、辺りを青紫色に染めていく。また、境内を抜けて「石窯(いしがま)ガーデンテラス」へ続く道は、青や薄紅色などの紫陽花で彩られる。そしてテラス前では、白い紫陽花(アナベル)が一面に咲き揃う。中には珍しい淡桃色の花も見られ、その規模は鎌倉随一である。
盛夏の頃は百日紅(さるすべり)。本堂や喜泉庵(きせんあん)前などで紅白の花を咲かせる。テラスへ続く道では、百日紅と競うように蓮が咲く。また、足利直義(ただよし)(足利尊氏の弟)の墓所周辺に広がる緑の竹林は、笹鳴りの音とともに涼やかな風を運んでくれる。
夏から秋にかけて、本堂前や裏山では、ピンクや白の芙蓉(ふよう)が咲き始める。また、本堂裏の足利貞氏(さだうじ)(足利尊氏の父)の墓所周辺では、淡桃色の秋桜(こすもす)が秋風にそよぐ。季節が進むにつれ、散策路では薄紅色の秋明菊(しゅうめいぎく)も咲き始める。
初冬の頃は紅葉(もみじ)。本堂前では、真っ赤な紅葉と黄色い銀杏(いちょう)とが、緑青色の屋根と澄んだ冬空を背景に美しく映える。そして紅葉の落葉は、白砂の庭園を赤や黄色の色鮮やかな絨毯(じゅうたん)へと変えていく。また、裏山の散策路に立ち境内へと目を移せば、色づく木々を背に、錦秋の衣張山(きぬばりやま)を望むことができる。
足利氏縁(ゆかり)の浄妙寺。四季折々、季節の花々と禅寺の風情を味わえる趣深い寺である。
石塚裕之