4年前に狢窪公園で珍しい植物と出会った。ラン科オニノヤガラ属のクロヤツシロランである。熊本県八代で発見されたので「ヤツシロ」の名前が入っているが、関東以西から四国九州まで分布している。
クロヤツシロランは光合成を止めて、地中のキノコ類(クヌギタケ科やホウライタケ科)から栄養分を吸収するように進化した「菌従属栄養植物」である。そのため養分を作る葉は持たず、花と種をつける短期間だけ地上に現れる。
1cmの花は地味な黒褐色で、9月から10月に竹林や杉林の地上ギリギリに咲く。林床は暗いので、通常の受粉者であるハチやチョウは飛来せず、腐ったキノコの匂いを出してショウジョウバエを呼び寄せている。
3週間ほどして種が熟すと、30〜40cmに伸びてとてもよく目立つ。先端の果実はボンボリのような形に6裂して、ラン科特有の微細な種を風で散布する。
瀬谷市民の森やこども自然公園でも、クロヤツシロランの目立つ果実は見られるが、開花中の花を発見することは非常に困難である。
瀬谷区およびその周辺地域の自然環境をよりよいものにして次世代に引き継ぎたいとの願いから生まれたボランティア団体。畑作、水路及びビオトープの生物環境保全や生物観察会、環境保護に関する講演会開催、小学校総合学習や教員研修会への支援等に取り組んでいる。