資材置き場が、集い・つながり・挑戦の場へ(チャレパの取組)
横浜市との市境に位置する川崎市麻生区早野の住宅街にある空き地を活用し、地域の人が集い・つながり・挑戦できる場として、東急(株)が2022年4月にオープンした『ネクサスチャレンジパーク早野』(略称:チャレパ)。
もともと資材置き場などで暫定利用していた約8,000㎡のこの場所に、子どもが遊べるよう木や竹を使い巨大ブランコなどの遊具を作ったり、コミュニティ農園や焚き火スペースを設けたりと、空間づくりに着手。
今では、子育て世代や学校帰りの小学生の遊び場、高齢者が散歩の途中に立ち寄れる休憩処として利用するなど、地域住民の交流の場として定着し始めています。
「チャレンジャー」は延べ100人超!
”郊外に誕生したまちの拠点”として注目を集めるこのチャレパで、月1回ほどのペースで開催されているのが「challenge day(チャレンジデー)」。何かに挑戦したい人「チャレンジャー」がブースを出展し、来場者や他の出展者らとつながり・楽しむことで、新たな展開や可能性につなげていくことが大きなテーマの一つです。
こうした挑戦者を応援しようと、東急は出展料を無料にし、タープも無償で貸し出すなど、全面的にサポートしていて、これまでのチャレンジャーは延べ100人を超えたといいます。2024年9月14日に開催された第18回目のチャレンジデーも、10者のチャレンジャーとキッチンカーが登場し、多くの来場者で賑わいをみせました。
日野自動車デザインセンター
初めて出展したという日野自動車デザインセンターは、「未来を走るバス」のデザイン教室を開催。同センターの担当者は「新たな発想が、物流問題や人手不足など社会課題解決のヒントになれば」と可能性を探ります。
桐蔭横浜大学
同じく初出展の桐蔭横浜大学は、これまで続けてきた能登半島地震の被災地支援の取り組みを、初めて学外で実施。被災地出身の農家と連携した野菜の販売会などで得たこの日の収益金を現地に送ることで、参加者や子どもたちに「自分事として捉えてほしい」との思いを込めました。
元フォトグラファーの速水諄一さん
チャレンジャー常連で元フォトグラファーの速水諄一さん(83)は今回、川崎ものづくりブランドに認定されている「キットパス」を用いたバルーンやフィルムへのお絵描き・塗り絵体験を企画し、ブースには多くの親子連れの姿が。チャレパで写真や絵などアートの魅力を伝え続けてきたこともあり、「最近は街を歩いていると子どもが声を掛けてくれるようになってね。うれしいですよ」と笑顔を見せました。
昨年は、地元の虹ヶ丘小学校5年生もチャレンジャーになりました。毎日の登下校で気がかりだった丁字路交差点の危険性を地域住民らに問うアンケートを行い、関係者や来場者から称賛の声が寄せられました。まさに、子どもたちが地域の課題を自分事と捉え、住みよいまちに変えていこうという思いが表れた好例の一つといえそうです。
「自立分散型社会」のモデルケースに
近年、持続可能なまちづくりの構想として、それぞれの地域の特性に応じた食・住・遊を楽しむという「自立分散型社会」が求められています。
チャレパを運営する東急(株)事業企画担当の堀口直人さんは
「来場者ゼロだった場所が、2年経ち、今までにない人の流れが生まれ、年間1万人ほどが集まる空間になったのは大きな成果。こうした共創の思いが、共感・共助という形になって、災害時などでも生かされていくと思う。そして子どもにとっては、ふるさとでの経験が大人になっても原体験として胸に刻まれるはず」
と期待を込めます。将来的には地域による自走化を目指しているそうですが、早くもチャレパには朝の清掃活動に自発的に取り組んでいる人がいるなど、その芽が出始めています。
市制100周年を迎えた川崎市は、南北に長い地形がゆえに、それぞれの地域特性があり、そのエリアにあったまちづくりが求められています。
- 「このチャレパをモデルケースとして、市内各地に広がっていくことが理想」と堀口さんは将来に思いを馳せます。「ネクサスチャレンジパーク早野」が、少子高齢化が進み多様化する日本社会の新たな形の起点となるポテンシャルは十分にありそうです。