「祗園」というと京都を思い浮かべる人が多いと思われるが、鎌倉にも「祗園」という地名がある。ハイキングコースの一つ「祗園山ハイキングコース」は、鎌倉市街東の祗園山をたどる約1キロメートルのコースである。起点は鎌倉幕府滅亡の時に北条高時一族が最期を迎えた東勝寺跡であり、腹切りやぐらがある。そこから30分ほど行くと、相模湾を望む祗園山展望台に至る。山頂から崖に沿って険しい石段を下ると、鎌倉最古の厄除け神社として知られる八雲神社の境内に至る。
八雲神社は永保年間の創建と言われ、かつて祗園天王社とも呼ばれていたが、明治の神仏分離により八雲神社と改称された。八雲神社の歴史は、新羅三郎義光(源義光)が兄の八幡太郎義家(源義家)の奥州攻め(後三年合戦)の助勢に向かう途中で鎌倉に立ち寄った際、里民が悪疫の流行で難儀しているのを知り、これを救うため京都の祗園社(八坂神社)の祭神を勧請したのが始まりと伝えられている。境内には新羅三郎手玉石が置かれている。
7月には八雲神社例祭(大町まつり)が行われる。初日に神輿渡御が行われ、この神輿の「神輿振り」を拝観すると疫病も退散するといわれる。また、氏子が幼児を抱いて神輿の下をくぐり子供の無事な成長を祈願する「みこしくぐり」が行われる。お囃子は地元の若者、子供たちが中心となって行われる。祗園祭のような規模ではないが、地元に密着した親しみやすいお祭りである。
山東 直大