老舗酒蔵「吉川醸造」(伊勢原市内神戸681/合頭義理代表取締役)の日本酒が、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2026」のSAKE部門でゴールドメダルを獲得しました。日本酒の審査基準では一般的に不利とされる「硬水」を武器に変え、「世界基準の酒」を生み出した背景には、伊勢原の風土への深い敬意と、飽くなき挑戦がありました。
IWCは、ワインや酒の世界的に権威あるコンペティション。同蔵では、純米大吟醸酒の部において「雨降 成」がゴールドメダル、「菊勇 杜氏のよろこび」がシルバーに輝いたほか、純米の部で「菊勇 雨降大山純米酒」と「雨降 山廃雄町」がブロンズを獲得しました。
「雑味」を個性へ
日本酒造りにおいて、一般的には雑味を削ぎ落とした軟水の酒が評価されやすい傾向にあるといいます。しかし、同蔵が醸す銘柄「雨降」の生命線は、大山が育む「硬水」です。同蔵の合頭代表取締役は「日本の伝統的な審査会では『苦味や渋味、酸味』が減点対象になりかねず受賞が極めて難しい」と明かします。
しかし最近では、この硬水由来の骨格が「ミネラリティ(高ミネラル感)」という褒め言葉として評価されているといいます。「ここ数年で、日本酒を飲んだことがない海外の方や、フレンチのシェフたちから『料理の味をしっかり受け止めてくれる』と評価されるようになった。硬水の酒が、個性として世界に認められたのでは」と手応えを語ります。
IWC以外にも、フランスのトップソムリエらが審査する「Kura Master(クラマスター)」でも最高位のプラチナ賞を過去に獲得。今年4月には、「酒の神」として信仰される京都の松尾大社で行われた「酒-1グランプリ」に招待され、参加者投票でグランプリに輝いています。
日本酒の魅力発信
今回金賞を受賞した純米大吟醸は、米の70%を削り、フルーティーで華やかな香りのなかに、硬水ならではの気品ある芯が通った味わいが特徴。「特別な日を彩るセレモニーの酒」として、高級ホテルやギフト需要で国内外から熱い視線を集めています。
合頭代表取締役は、「日本酒に馴染みのなかった国内外の方に、この新しい価値と美味しさを広げていきたい」と、使命感を口にします。
世界に羽ばたく同蔵だが、その原点は伊勢原にあります。大山阿夫利神社の神水を汲みに行き、日本酒の元となる「酒母」を立てる酒造りを行っています。さらに、日向で育てた古代米や横山ライスセンター(串橋)が扱う伊勢原産の食用米「はるみ」を使うなど、実験的な酒造りにも次々とトライ。「食用米でも、酒造好適米に全く劣らない素晴らしい酒ができる」と、地元の農業の可能性も引き出しています。ほかにも、大山阿夫利神社や小田急電鉄との企画では、杜氏が日本酒のペアリングイベントを行うなど、町のブランディングにも一役買っています。
「伊勢原には阿夫利神社、日向薬師、伊勢原大神宮など、歴史的な素晴らしい場所がそろっている。酒は本来、神仏に捧げるもの。この町の魅力を、酒を通じて発信し、地元に還元していきたい」と合頭代表取締役は話しています。











