必要とされる場所にどこにでも出向いていきたいー。都内から真鶴町に移住した夫婦が移動本屋を9月から始めた。本屋の名前は「道草書店」。運営するのは中村竹夫さん(45)、道子さん(32)夫妻だ。
2歳の娘がいる中村さん夫妻は、「のびのびとした環境で子育てをしたい」と昨年秋に訪れた真鶴町の雰囲気にひとめぼれし、今年1月に移住。港町の生活風景を守る独自の「美の基準」の考えに深く共感したという。
「本のある日常は、生活を豊かにする」
町での暮らしを楽しむ中で、真鶴町に書店がないことを知った夫妻。前住地の文京区千駄木は夏目漱石など文豪縁の地で、書店も多くあった。「本のある日常は、生活を豊かにする」と書店の開業を思いつき、環境にも優しい移動本屋の形態を選んだ。
町内のパン屋の駐車場に小さなテントを張り、迎えた開店初日。町民に喜んでほしいと、大手の書店にはない選書にこだわり、絵本から文庫まで100冊ほどを並べた。すると待っていたかのように町内や隣町からも人が集まってきてくれたという。その様子はまさに、真鶴町の美の基準の一つでもある「小さな人だまり」そのもの。
本を通じて場所づくり
中村さん夫妻は「町の風景になれたようでうれしかった。本を通じて地域の人のつながりができる場作りをしていきたい」と語った。インスタグラムなどで情報を発信していく。