2022年10月30日に投開票が行われた茅ヶ崎市長選挙。
同日、小学生〜17歳のこどもたちによる模擬選挙「ちがさきこども選挙」が開催されました。
「ちがさきこども選挙」とは?
こどもたちは、有権者ではないけれど、立派な主権者。政治や選挙を身近に感じられず投票率も低い現状がある日本で、投票権よりも⼤切なのは、⼀⼈ひとりが未来について考えを持ち、 その声が政治に届くことなのではないか。今そういう機会がないのであれば、市民がこどもの声を政治や社会に届け、こども自身が社会と関わる空間を生み出していこう。
そんな思いを抱いた茅ヶ崎在住の大人たちが「こども選挙実行委員会」を結成したのは今年6月のこと。9月からは公募で集まった「こども選挙委員」のこどもたちや保護者、市民ボランティアとともに、草の根的に活動を続けてきました。
15人の「こども選挙委員」たちは、民主主義について学び、街のことを知り、話し合い、候補者に3つの質問を投げかけました。それに対し、候補者の皆さんは丁寧に答えてくださり、その動画はホームページで公開。茅ヶ崎市のこどもたちに、動画を参考に投票することを呼びかけてきました。
そしてついに迎えた10月30日。こどもたちが運営も担った「こども選挙」当日の様子をお伝えします。
市内11カ所、58人のボランティアの力で
2022年10月30日、令和4年茅ヶ崎市長選挙当日。市内11ヶ所のこども選挙の投票所では、こどもと大人が集結し、朝から準備に勤しんでいました。
街中にあるカフェや本屋、コワーキングスペース、ショッピングモールの一角でも。
茅ヶ崎市の選挙管理委員会から借り受けた記入台を組み立てて投票箱を設置し、「こども選挙」ののぼりを掲げて。10時の投票開始時刻を前に、それぞれに準備が進んでいきます。
そして迎えた午前10時。「ちがさきこども選挙」が一斉にスタートしました。
本物の投票台と投票箱を前に、こどもは主権者に。
「ちがさきこども選挙投票所、オープンします!」
元気な掛け声とともに、早速1人目のこども選挙”有権者”が来場。受付で年齢と居住地確認を済ませて用紙を受け取り、少し緊張の面持ちで記入台へ。その姿には、主権者としての意志が確かに感じられます。
各投票所最初の投票前には、本当の選挙さながらのゼロ票確認も。
空の投票箱に、かけがえのない一票が投じられました。
こどもたちは、任意で「候補者へのメッセージ」も書くことができます。自分がなぜその人に一票を投じたのか、何を期待しているのか。多くのこどもたちが願いを託すように記入台へ向かい、メッセージ箱へ。
こうして投票行為を終えたこどもたちには、最後に「投票済証」が手渡されました。公職選挙法の「こどもの選挙運動」にあたる行為をしないよう、注意事項も記載されている、大切な投票の証。風船とともにしっかりと握りしめ、投票所を後にする姿が印象的でした。
当日、興味を持って投票所に足を運んだものの、誰に投票していいのか困ってしまうこどももいました。そんな場合は、こども選挙委員によるインタビュー動画を見るように勧めました。
動画を書き起こした「こども選挙新聞」も各投票所に設置したところ、「動画よりも文字で読みたい」と、じっくり目を通してから投票台に向かうこどもの姿も。みんなそれぞれに悩みつつ、真剣に一票を投じていました。
投票所運営も、こどもたちの手で。
市内11カ所。ボランティア総勢58名。その中にはこどもも多く含まれており、投票所運営の大半はこどもたちの手で行われました。
設営準備も、受付も、案内も、ビラ配りも。「自分たちの選挙は自分たちでつくる」という意志ある姿が、市内のあちこちで見られました。
「こども選挙やっています!」
「本当の投票箱で投票してみませんか?」
こどもと大人の懸命の呼びかけが、投票締め切りの15時まで続きました。
いよいよ開票。本当の選挙と同様に厳格に
15時を回り、本部となった「Cの辺り」には、各投票所から投票箱が運ばれてきました。いよいよ開票です。
本当の市長選挙の結果発表前の作業になるため、開票に立ち会えるのは、「こども選挙委員」のこどもたちと、本当の市長選挙の投票を済ませた大人たちのみ。実行委員メンバーのナビゲートにより、本当の開票作業と同様に厳格に作業を進めます。
開票作業を行うのは、一つの投票所あたり3人。投票箱を開けて、投票用紙をトレーの上に移し、候補者ごとに仕分けしていきます。
候補者ごとに得票数を数えたら、用紙に記入。別の人が確認作業を行い、間違いないかチェックしていきます。白票や無効票についてもその場で協議が行われ、投票数を取りまとめていきます。
メッセージ箱も、同様に開票。誰にどれだけのメッセージが届いているか、綿密で精緻な作業が続きました。
Cの辺りの目の前に広がるちがさきサザンビーチが夕焼け色に染まる頃、ようやく11カ所の開票作業が終了。投票所での投票数のみ、この場で発表されました。
「投票数は、399票です!!」
実行委員の発表に、大きな拍手が沸き起こりました。こども実行委員や保護者のみなさんは、この1ヶ月ほど、ポスターやチラシの設置・配布を市内各所で続けました。熱心な先生からの問い合わせで一部の市立小学校でのチラシ配布や学童での模擬投票も実現しました。
その結果、399名ものこどもたちが、自分の意志で投票所に足を運んでくれました。こどもたちと大人たちの本気が、ここまでの成果を生み出したのです。
この日の最後には、「こども選挙委員」を担ったこどもたちも一人ひとり感想を発表していましたが、その表情はやりきった感情に溢れていました。
自分ごととして全力で取り組んだこどもも、こどもを信じて運営を委ね、サポートに徹した大人も。誰もが力を出し切った「こども選挙」の1日は終わりました。
ネット投票と合わせた結果は?
実はこの日、投票所と同時進行でネット投票も行われていました。都合で投票所開設時間内に足を運べないこどもたちのために、ネットでの投票を受け付けたのです。
ネット投票の仕組みも、ボランティアの手で開発。茅ヶ崎市在住かどうか、生年月日も自己申告ではありますが、朝7時から夜8時まで票は集まり続け、1日の合計は167票。投票所と合わせて、「こども選挙」に566票が投じられたことになりました。任意だったメッセージも、359も集まりました。(候補者ごとの得票数など詳しい結果はホームページにて公開しています)
結果よりも大切なのはプロセス、そしてメッセージ
開票の結果、各候補者、本当の選挙とは少し違う得票率となりました。そこに注目してくださる方々もいます。
でも私たち実行委員は、結果そのものよりもこどもたちと歩んだ2ヶ月間のプロセス、そして子どもたちが票を投じると同時に書いてくれた候補者へのメッセージこそ、大切だと考えています。
「こども選挙」はまだ終わりではありません。これから私たちは、ひとつ一つのメッセージ、そのすべてを、3人の候補者に心を込めて届けて参ります。市長になった方も、そうでない方も、有権者ではなくても主権者である子どもたちの切なる声を受け取り、今後の活動にいかしてほしい。こどもたちの考える力、主権者として行動する力を信じて、社会参加の機会をつくってほしい。
心から、そう願って。
ちがさきこども選挙 ホームページ
https://kodomo-senkyo.com/歩をつづったnoteマガジン「こども選挙マガジン」
https://note.com/ikedamisako/m/m6473ba2e3c24
執筆:池田美砂子(こども選挙実行委員会/Cの辺り)