武蔵新城駅近くの上新城町内会内で毎月第4水曜日に開催されている「お茶べり会」。毎回20人ほどの高齢者が地元のコミュニティースペースに集まり、お茶を飲みながら会話を弾ませている。その多くが一人暮らしで、認知症の当事者と家族らも一緒に加わり、約2時間のくつろぎタイム。参加者の中には、手作りのおはぎや根付を全員に配ったり、腹話術を披露したり、特技をいかした交流も生まれている。この輪に、医療従事者や介護事業者、行政職員らも入り、話し相手や悩み相談も受けている。
3月22日、この日も朝から15人ほどの高齢者が会場に。いつも通り日常会話を楽しんだ他、WBC決勝で侍ジャパンが優勝を決めた瞬間を映像で見守り喜び合う姿も。ボランティアで訪れた理学療法士による健康体操も行われ、椅子に座りながら体を動かすなど体調管理にも気を配った。
役回り設けず、平等に
この会が始まったのは2011年の東日本大震災後。「もし災害などが起こって身に危険が及んでも、一人暮らしだと誰にも気づいてもらえない」―そんな切実な声が地域から上がり、同町内会元婦人部長の石井仁美さん(75)が立ち上げた。誰もが気軽に参加できるよう、煩わしいルールや規制などは一切なし。入退会の必要もなく過ごしやすい環境に配慮。石井さんは「負担になりがちな役回りも設けず、みな平等。堅苦しくなく、少人数でも長くゆっくり続けられ、居心地の良い居場所でつながりが持てれば」と思いを込める。腹話術で場を盛り上げる西野昭伸さん(81)は「人形を通じて、言葉を選びながらみなが笑顔になるように。男性にももっと足を運んでもらえたら」と話す。
10年以上続くこうしたコミュニティーは珍しく、行政も注目する。区役所地域みまもり支援センターの村越三馨さんは「高齢者支援のため地域でつながり支え合う理想的な環境。他エリアの参考になる」としている。