道を歩くと必ず目にするもの、それは自動販売機(以下、「自販機」)。数メートルおきに設置されている様子は、もはや当たり前の光景ですが、日本は普及台数や技術力の高さなどから〝自販機大国〟とも言われています。
ご存じのとおり、その多くが飲料やタバコの自販機。しかし、コロナ禍による非接触・非対面型サービスの需要の高まりを追い風にその存在が見直され、昨今では「え!こんなものまで!?」と驚くような商品が販売されているのをご存じですか?
事業者が自販機を導入するメリットはさまざまですが…
- 非対面、非接触で安心
- 無人販売のため人件費削減に期待
- 実店舗が営業時間外でも24時間365日販売可能
- 商品のロスの抑制
- 販売機自体が企業広告の役目を果たす
…などが挙げられるようです。
いざ、〝自販機めぐり〟へ!
横須賀でも2020年以降、ユニークな自販機が登場しており、そのたびにSNSなどで話題になっています。一体どんなものがあるのか、今回は市内事業者に限定して一部をご紹介します。
人気店の味を家庭で
横須賀の町中華の名店といえば、「上海亭」という人も多いのでは。まず最初にご紹介するのは、同店で実際に提供している看板メニューの自家製餃子を冷凍した「タレのいらない!焼餃子」の自販機です。
以前からネット通販で取り扱っていましたが、あるとき、横須賀市出身の俳優・小泉孝太郎さんがテレビ番組で絶賛したところ注文が殺到!生産量を増やすために製造マシンを導入し、大量生産体制を整えたことで、2023年2月から自販機でも販売を始めました。
置かれている場所は湘南衣笠ゴルフ(大矢部)の駐車場のみにも関わらず、月間で300食以上を販売。焼餃子に続いて、しらすやえびが入った茹でるだけで食べられる水餃子も仲間入りして、ますます注目を集める予感大!
上海亭は、横須賀中央駅と安浦町に実店舗がありますが、「それ以外のエリアの人にも上海亭(の味)を知って欲しい」と、いわば3号店の位置づけだそう。店舗に誘導するための広告塔の役割も果たしているそうです。
24時間楽しめる本格フルーツパーラー
京急久里浜駅改札前に2023年3月、突如として現れ話題を呼んでいる自販機が「Fruits Can JIRO store」。「24時間フルーツパーラー」を触れ込みとするフルーツケーキの自販機で、ハイランドにあるフルーツサンドの人気店「Fruits Sand JIRO store」が展開しています。
季節に応じたフルーツケーキが登場するそうで、第1弾はいちご。取材日は、とちおとめ(1000円/甘みと酸味のバランスが抜群で生クリームとの相性も最高)と、やよいひめ(1300円/神奈川では目にする機会が少なくなじみはないが、香りが高く甘みと酸味のバランスに優れる)の2種類がありました。
透明な容器で断面が見える特徴的なデコレーションが目を引く、いわゆる“映え”スイーツです。ふたを開けると北海道産生クリーム、フルーツ、スポンジ、ピューレが詰まっていて、ケーキとパフェのいいとこどりといったイメージ。「面白いことを仕掛けたい」というオーナーの思いで設置されたのも頷けます。
気軽に贈れるフラワーギフト
ベース入口付近、よこすか平安閣近接のコインパーキング内にあるのは、花の自動販売機。上町に本店を構える老舗生花店「花う」が2021年に設置しました。車が止まっていると通りからは少し分かりにくいですが、自販機上部に“赤い大きな花”が咲いているのが目印です。
商品のラインナップはその時々で変わるようで、この日はプリザーブドフラワーや石鹸でできた「ソープフラワー」のほか、可愛らしい一輪挿し、雑貨などバラエティに富んだアイテムが並んでいました。どれも色とりどりなので、気分や贈る相手のイメージなどに合わせて選べるのも嬉しいところ。
また、「エアフルール」という空気を充填した鮮度を保つ特殊ラッピングの生花(1本)も人気で、「母の日やバレンタインデーなど季節のイベントを中心に販売しています」とのこと。お店のSNSを見てみると、今年のバレンタインデーはデコレーションやバラ風呂用の“バラの花びらだけ”をぎゅっと詰めたユニークな商品も扱っていたらしく、これは生花店ならではのアイデア!
価格はどれも数百円から3000円程度と手頃なので、ちょっとしたミニギフトや急な手土産にもよさそうです。
ボタン1つでワンランク上の極上肉
創業110年を超す老舗の精肉店「横須賀松坂屋」がプロデュースする焼肉店「炭火焼タイガー」の自販機は、2023年4月に設置されたばかりのニューフェイス!とうとう時代はA5ランクの黒毛和牛焼肉盛り合わせまで自販機で買えるようになりました…。
精肉店×自販機とは斬新なアイデアですがマスター曰く、「新しいことにチャレンジしようとしていたところに、タイガーが入っているビルのオーナーからいい場所を確保してもらえたので」とのこと。そんな肉に対する思いや知識がハンパないマスターが厳選し、肉の状態を見て一枚ずつ手切りにこだわった極上肉、本場ドイツのコンテスト(IFFA)でメダルを獲得したソーセージ、観測船しらせの乗組員が南極で英気を養う絶品ホルモンなどを買うことができます。
価格帯は1000円~5000円で、なかでも気になるのは「万年福袋」(2000円)。タイガー特選の黒毛和牛が入っていて、どの部位が当たるかは買ってみないと分からないわくわく感もあります。「福袋」と銘打っているだけあって、お値段以上の肉が入っているのだとか。自宅用だけでなく、横須賀土産にもおすすめです。
三浦半島の美味が大集合
ここからは番外編で、三浦市の自販機をご紹介します。
京急「三崎口」駅構内、1番線ホームにも面白い自販機があるのをご存じですか?その名も「三浦半島 パンと畑の直売所」。2022年に設置された、名前のとおり横須賀を中心とした地場食材が買える自販機です。
商品は鈴也ファームの野菜、安田養鶏場のたまご、法塔ベーカリーのパン、よこすか猿麺の猿島わかめを練りこんだ乾麺、さらには名物のよこすか海軍カレーのレトルトパック、干しシイタケなど地元のうまいものが集合しています。ここが駅のホームだとは思えない充実ぶりにびっくり。
ふと、ロッカー式の自販機の下段に目をやると「SDGs BOX」と書かれた扉が。ここには期限の近くなったパンがいくつか入っていて、エコでお得!誰かとシェアしてもいいかもしれません。
筆者はかわいらしいパンダ型のクッキーをゲット。つぶらな瞳でどこからかじろうか少しためらわれますが、優しい甘さとサクサクとした食感がおいしかったです!
場所柄、観光客による購入が多いかと思いきや、駅員さんの話では意外にも「地元の方が電車を降りて帰りがけに野菜やパンを買っていく様子をよく見ます」とのこと。駅周辺にはコンビニ以外の小売店はないので、ちょこっと買いに重宝されているのでしょうか?
そういえば筆者が子どもの頃、スイミングスクールにあったセブンティーンアイスに衝撃を受けた記憶がありますが、アイスの自販機も今ではすっかり市民権を得ていることを考えると、今後まだまだユニークな自販機が誕生して、定着し得るかもしれません。