パラリンピックでの日本人選手の活躍など、人気が高まっているパラスポーツ。「ボッチャ」など、身近な地域にも浸透してきましたね。そんなパラスポーツも含め、横浜市では今、「インクルーシブスポーツ」が広まっています。
沢渡三ツ沢地域ケアプラザで体験会
- インクルーシブスポーツとは、障害の有無や年齢、性別や国籍を問わず、「誰でも一緒に参加できる」スポーツやパフォーマンスのことです。
2023年12月5日に、横浜市神奈川区の沢渡三ツ沢地域ケアプラザで、横浜市スポーツ協会主催の「インクルーシブスポーツ体験会」が開催されました。
今回の体験会は、沢渡三ツ沢地域ケアプラザとのコラボ企画で、「こもれびカフェCoCo」にもお手伝いいただいています。こもれびカフェCoCoは、「障害の有無を超えた地域交流」をテーマに、毎月開催されています。当日は、日頃からカフェに通っている区内3つの障害福祉作業所の皆さんが参加されました。また、カフェの運営メンバーや地域住民の方、施設のスタッフさんも一緒に「ボッチャ」と「タップダンス」を体験しました。
白熱のボッチャ
「ボッチャ」は、カーリングに似た競技。最初にジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールを投げて、その後は青と赤のボールを6球ずつ投げ合い、最もジャックボールに近づいたボールが得点になります。
軽く投げてもしっかり転がるので、障害のある方や子ども、高齢者の方でも気軽にできます。相手のボールに当てて動かしたり、ジャックボールを動したりしてもOKなので、1投でゲームの展開も大きく変わり、体力や身体能力に関わらず、勝負を楽しめます。
横浜市スポーツ協会の渡邉さんによる簡単なルール説明の後、早速チームに分かれて試合開始。ナイスショットにはハイタッチや歓声が、ミスショットでは頭を抱えて悔しさを表すなど、どんどんボッチャの魅力に引き込まれていました。コントロールが得意な人やスピードに自信のある人など、個性に合わせて戦略も考えながら、笑顔でボールを投げる姿が印象的でした。
笑顔のタップダンス
熱いボッチャ対戦の隣の部屋では、「タップダンス」の体験会が。指導するのは、タップダンサーの山本哲也さん。山本さんは、「障害の有無に関わらずみんな一緒に楽しめる社会の実現」を目指し、特別支援学校や障害児者施設で公演を行うNPO法人「Power in da Performance」のパフォーマンスやワークショップを行うメンバーでもあります。
まずは、山本さんが圧巻のタップダンスを披露。音楽に合わせたキレのある動きと、足元から繰り出される音に、思わず記者も釘付けに。
その後は、基本ステップを教わり、参加者の皆さんもダンスに挑戦。最後はステップを組み合わせクリスマスソングに乗せたパフォーマンスを全員で行いました。ダンス好きの方は元気よく、照れ屋さんなメンバーも、椅子に座りながら足音や手拍子でリズムを取り、笑顔で参加していました。
- 体験会を終え「ボッチャは楽しかったけれど、もっと上手に投げれるようになりたい」「ダンスが好きなので参加できて嬉しかった。先生はすごい!」など、楽しげな表情や各自の個性を生かして輝く姿が印象的でした。
横浜市スポーツ協会の渡邉さんと小内さんは、「勝敗でも盛り上がりつつ、一緒にプレーするという良さを体験してもらえたと思います。習ったばかりのタップダンスで嬉しさを表現している方もいらっしゃるなど、楽しんでもらえてよかったです」と振り返りました。
「皆さん前向きに参加してくれて嬉しかったです」と話すのは山本さん。「自分で音を出すダンスはタップだけ。踊るのはもちろん、手を叩くだけでも一緒に楽しめるのが魅力です。多くの人たちにその楽しさを発信していきたいですね」と笑顔を見せてくれました。
地域に居場所を
「いつもとは違った体験に、参加者の方々もワクワクしている様子でした」と話すのは、こもれびカフェCoCoの代表・小森正美さん。
こもれびカフェは、区民活動支援センター「みんなの居場所のつくり方楽しみ方講座」の受講生10人により発足し、2018年5月から毎月1回第2土曜日にカフェを開催しています。パンや菓子づくり、歌や体操などのイベントを、障害のある人・ない人が一緒になって楽しんでいます。障害者がスタッフ側として活躍することもあるそうです。
「地域に出て、そこに暮らす人たちと交流するきっかけを届けたい」と小森さん。「障害の有無を超えて交流を深め、障害者が隣にいても普通だと思えるように。誰もが地域の一員として安心して暮らせるまちづくりを進めたいです」と意気込みを語ってくれました。
取材を終えて
体験会では、参加者の皆さん一人一人が自分らしく輝き、笑顔で交流する姿が印象的でした。身近な地域に暮らす人たちと、顔の見える・声をかけあえる関係を作り、“ひとりぼっち”にならない地域共生社会の礎を垣間見た気がします。