市制100周年を彩った横断幕やフラッグなどの広報物をアップサイクル〈川崎市市制100周年〉

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市制100周年を彩った横断幕やフラッグなどの広報物をアップサイクル〈川崎市市制100周年〉
横断幕をプレス機で裁断する齊藤さん

廃棄予定の横断幕などが生まれ変わる

川崎市は2024年から2025年にかけて、市内主要駅を中心に掲出していた、市制100周年を彩った横断幕やフラッグなどの広報物を再利用するアップサイクル事業を行いました。

高津区で革製品の製作・販売を手掛け、アップサイクルの取り組みを行っている「株式会社SKLO(スクロー)」と連携し、広報物に使われているターポリン生地(ポリエステルなどの布や織物に合成樹脂を塗布した耐久性に優れる生地)を、星やハート、飛行機など10種類の形に切り抜いたオーナメントを約6000個作成。3月1日に、市内全58カ所のこども文化センターに配布し、紐やワイヤーでオーナメントを繋いだガーランド作りを行いました。

こども文化センターの壁に飾られているガーランド

素材そのままを生かして

株式会社SKLOの代表取締役を務める齊藤倫平さん(44)は、2年ほど前からアップサイクル事業を始めました。

きっかけは、相鉄線の廃棄する車両の床材が余ってしまうので、キーホルダーを作らないかという依頼を受けたことです。床材はプラスチックやゴム系の素材ですが、革を切断する機械で加工することができました。

これまで培った技術を使い作成したそのキーホルダーは、電車ファンに大好評だったそうです。

アップサイクル製品として最初に作成した電車の床材を使ったキーホルダー

「革にこだわる必要はないのでは?」と考えた齊藤さんは、プロスポーツチームと連携し、サッカーやバスケット、アメフトなどのパンクしたボールを素材にし、さまざまな製品作りも行うようになりました。サッカーJ1の川崎フロンターレの試合前に開かれるイベントでは、廃棄ボールを活用してキーホルダーを作るワークショップを行い、人気を集めています。

市制100周年の広報物をアップサイクル

日頃から再利用できる素材を探している齊藤さんは、今回の川崎市からの依頼も、新しい素材の活用に興味を持ち、「ぜひ、やってみたい」と引き受けたそうです。

横断幕やフラッグは、外に飾られていたものが多く、汚れていたものもありました。まずは会社のスタッフ総出で雑巾を片手に丁寧に汚れをふき取り、消毒も行いました。一辺が5mもあるような大きなもので、きれいにすることに苦労したといいます。汚れを落とした素材は、革製品のワークショップで使っていた型を使い、機械で裁断。ガーランドで使えるように一つ一つに手作業で紐を通す穴を開けて完成させてました。

素材として使用した横断幕やフラッグには、鮮やかな3色のグラデーションで描かれた「100th」の文字や、写真が多く使われていたため、切り抜かれたオーナメントは色とりどりで、一つひとつが柄や色が異なる「一品もの」となりました。

素材に使った広報物

星や船などさまざまな種類のあるオリジナルの型

型抜きをしたオーナメントを紹介する齊藤さん

ストーリーのある製品が価値を生む

「リサイクルは一度使用したものを再び資源に戻すことで、アップサイクルは価値を上げて素材を製品にすること」。素材をそのまま使うアップサイクルした製品は、ストーリー性が加わり付加価値を生むといいます。例えば川崎フロンターレの試合で使われたボール、バスケットボール選手の履いていたシューズなどを再利用し新たな製品にすると、ファンが抱くのチームや選手への思い製品にプラスされます。それがアップサイクルの魅力だといいます。

今回、市制100周年を彩った広報物を使いオーナメントを作成し、たくさんの子どもたちがイベントに参加しました。齊藤さんは「どんなものでできているのか、面白いと思ってほしい。市制100周年という記念の年が一生の思い出になってくれると思う」と話します。

アップサイクル製品を広めたい

齊藤さんは、市制100周年の広報物を使い、ふるさと納税の返礼品を作ってみてはどうかと川崎市に伝えているそうです。また、ターポリンという素材は海外では珍しく、イギリスのある企業が興味を持ち、バッグを作ってみては提案をうけているそうです。もしそれが可能になれば、川崎市が運営する越境ECサイト「KAWASAKI CITY STORE」などで販売してみても面白いといいます。アップサイクルのアイデアは尽きません。

住所

神奈川県川崎市高津区

公開日:2025-03-26