日本全国にはあまたの植木職人がいます。お庭の木から都市の緑まで鑑賞用や景観用など、様々な目的で植えられた木々(植栽)の管理などをするのが植木職人の仕事です。
大きく育った木には、1本1本「物語」があります。その1本1本の「物語」に寄り添い、植えた人、見た人に思いを馳せながらハサミを入れる植木職人に出会えると、暮らしがより豊かになるような気がします。
異彩の植木職人
神奈川県綾瀬市でUEKIYA合同会社を営む若井利允(わかい・としまさ)さんはそんな職人の中ではひときわ異彩を放つ職人のひとり。
大学からコンサルへ
東京都立川市出身の若井さんは、1978年生まれの43歳。
長岡造形大学(新潟県長岡市)の建築・環境デザイン学科でランドスケープデザインを専攻し、卒業後は都内にある景観デザインのコンサルタント会社に就職しました。
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「もともと植物などにあまり興味はなかったのですが、信濃川のほとりにあるみどり豊かな大学のキャンパスが大好きで、休みの日も毎日大学へ行くほどでした。今思えば植木職人になったのも学生時代の環境が大きく影響しているのかもしれません」と若井さんはいいます。
樹木医を目指し退職
会社では公共空間のデザインや設計などをしていましたが、仕事をする中で出会った巨木や古木の治療をする樹木医の姿に「自分もこんな仕事がしてみたい!」と思うようになり退職します。
退職後、東京都大田区にある各国大使館の庭園管理を請け負う植木屋の門をたたき当時の親方のもとで修業を積み、2010年に【樹木医】に一発合格。
- 2014年に「樹木医の植木職人」として独立することになりました。
樹木医になるには「業務経験が7年以上」、樹木に関する専門的な知識が求められる選抜試験に合格した後、研修や面接を経て総合的評価で合否が判定されます。当時の合格者の平均年齢は40代後半。32歳での合格はその年2番目に若い年齢でした。
※令和2年12月現在の認定登録者数は全国で2985人。
木の声を聞く仕事
若井さんは「木は話すことはできませんが、自分の状態を様々な形で伝えてくれます。植木職人としての技術と経験、樹木医の知識を活かして木と人にとってできる限り良い方法を考え作業していきたい。」と、信念を語ります。
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さらに「植木職人は若い人のなり手が少ないので、若い人たちが憧れるような仕事をしていきたいですね」といい、自分のこどもたちとも「いつか一緒に仕事ができたらいいな」と話しています。