長引くコロナ禍、地域の医療現場の状況や、健康を保つ方法などを約1600人の会員が所属する(一社)横浜市歯科医師会の吉田直人会長に聞きました。
歯科医院では新型コロナウイルス感染症対応はどのように行われているのでしょうか?
「歯科診療所は口の中を処置する場所ですので、元々しっかりした院内感染予防を行っています。それに加えて今は、『三密』回避など更なる予防策を徹底する様になりました。横浜市歯科医師会では、会員に向けて感染症対策の研修会を実施したり、高機能換気扇やウイルスが飛び散るのも防ぐとされる厚労省推奨の口腔外バキュームなど、国の補助金を活用しながら整備できるよう支援しています」
ワクチン接種に関して、歯科医師会としてはどう対応されていますか。
「ご存知の通り、歯科医師がワクチン接種をすることを国が認めています。現時点横浜市では医師会でしっかり対応できておりますので、歯科医師会としては要請があった時にいつでも協力できるよう体制を整えているところです。
一方、コロナワクチンの職域接種については、神奈川県歯科医師会が7月4日から開始しました。本会でも、医師会の先生方の負担を少しでも軽減しサポートできればと考え、今後のコロナワクチン職域接種に対応できるよう、筋肉注射の研修会の開催など準備を進めているところです」
医療機関の受診控えが言われていましたが。
「実際、コロナに感染するのが怖くて・・・と1年ぶりにいらっしゃった患者さんもいました。でも、歯の痛みってなかなか我慢できないですよね。また、今は定期検診やクリーニングなどメンテナンスで通う方が増えています。間が開くことにより調子が悪くなることを患者さん自身が実感しているようで、受診控えは徐々に減ってきていると思います。
お口の健康が全身の健康につながると言われますが、ウイルスも口から侵入します。歯周病や感染症の重篤化を予防するためにも、定期的に来院してお口の健康を保って欲しいと思います」
コロナ禍だからこそ、口腔ケアが重要なのですね。
「ずっとマスクをしているので、口腔機能が落ちている人が増えています。特に歯周病は食生活の乱れなどが原因で、10代半ばの若年層でも発症します。歯茎から出血する、口臭が気になるといった症状がでたら歯科医院に相談下さい。口腔ケアの大前提となるのは、栄養バランスの良い食事をとる、適度な運動をする、規則正しい生活をする。生活習慣病予防と同じです。
歯茎の色は全身の毛細血管の状態がそのまま現れているので、日頃からチェックしてみるとよいですね。健康であれば引き締まったピンク色、歯周病だと赤く腫れてぶよぶよに。脳や腎臓など全身の毛細血管も、この歯茎と同じ状態になっています。
よく歯磨きはいつしたら良いですか?という質問を受けますが、お口は食器と同じ。朝ごはんに使ったお茶碗を洗わずに、お昼ごはんに使うことはないですよね。きれいな器だから美味しいごはんが食べられる。食べたり飲んだりしたらすぐに磨くこと。日中仕事などで歯磨きが難しい場合は、口をゆすぐだけでも効果があります。幼少期から習慣付けることが大切です」
子どもの予防歯科について教えて下さい。
「特に口内環境の変化が大きいこどもたちは、虫歯の予防だけでなく、生活習慣の改善やブラッシングの指導、普段の歯磨きでは取れない歯石のクリーニングなどを行うため、3〜4カ月ごとの来院が理想です。ある程度の年齢になると、親が言うより、歯科医や衛生士から言ってもらった方が伝わることもありますから。大人も同様にかかりつけ医を持って、定期的に診てもらうようにして欲しいですね」
最後に、読者にメッセージをお願いします。
「冒頭申し上げた通り、歯科医院の感染症対策は元々高い水準にありますし、歯科治療を通じてコロナに感染症した事例は全国でひとつもありません。安心して来院していただけたらと思います」
(取材日:2021年6月)