【目次】
◆天災をにらみ、眠らない会社
◆金子建材土木のもう一つの顔 伝統を守る、支える、伝える
◆子どもたちへ。町を守るって、こういうこと
◆湘南の浜辺を守る 知ってますか?「養浜」
◆品質マネジメントの国際基準を取得
◆地域の社会基盤、造る思い 社員の声
◆次世代の金子建材を担う人材よ、来たれ
天災をにらみ、眠らない会社
神奈川の中央に位置し、相模川の左岸に広がる寒川町。有名な寒川神社の近くに社屋を構える㈱金子建材土木。「建材」に「土木」と聞けば、まず頭に浮かぶのは工事現場だろう。同社も、数々の地域のインフラ整備を担ってきた。
道路や河川、上下水道の工事などもその一例だ。どれも県や町などの行政が管理しているが、実際に現場を見守り、維持に汗を流しているのは同社のような民間企業だ。
2014年や2019年の台風など、近年の風水害は規模を増しているようにも思える。神奈川県央は相模川が流れ、特に寒川町は目久尻川や小出川など、河川が複数流れ、特に浸水被害のリスクが高い。万が一道路や橋に被害が及べば、住民の生活の根幹が揺らいでしまう。
台風が到来しそうになると、金子建材土木では職員が待機して万全の体勢で備える。「突風が強い。橋の交通を封鎖してほしい」、「緊急工事が必要だ」。行政からの連絡が入れば即座に反応する。夜中にトラックで町を巡り、倒木や冠水といった異変がないかをチェック。台風以外でも雪が降れば夜中に積雪対策の塩カルを散布する。凍結が早い相模川の銀河大橋や、坂道の多い岡田地域、産業道路の地下道などは注意が必要だ。
「落ちているゴミを拾ってほしい」と連絡が入ったり、交通事故で道路上に流出してしまった軽油の処理など、専門技術を要する作業も手掛けてきた。手すりやガードレールが曲がっただけでも、命に係わることがあり、誰かが現場に行かねばならない。こうした連携は地元の建設業協会と、行政の協定が基になっている。「あまり知られていませんが、事故さえなければ、それでいいんですよ。例えば土石流などの被災地で現場の復旧作業を担っているのも、たぶん地元の業者さんでしょう」(同社・佐藤部長)。
道路に車や人が行き交う。川が穏やかに流れる。何気ない風景を守ってきたのはこうした民間建設業者なのだ。
金子建材土木のもう一つの顔 伝統を守る、支える、伝える
金子建材土木の創業者は、故・金子茂四会長。創立当初の建材業から、次第に土木の造り手も担い、業務を拡大した。会長の人柄を知る人によれば「とにかく現場好き、しょっちゅう現場を回って指示する人でした」。面倒見のいい経営者であり、根っからの職人。ブルドーザーなど重機の操作も繊細だったという。
生まれ育ちが寒川神社の近くだったこともあり、生涯神社への崇敬が厚かったようだ。
「神社関連の仕事に取り組む時の会長は、目の色が変わったようでした」
そう語るのはベテラン社員の三橋正夫さん。
寒川神社境内などに設置される「注連縄」作りは、12月に金子建材土木の職人たちが手作業で取り組む、1年の集大成のような仕事だ。緊張感のある作業場では交わす言葉も少なく、ひたすら藁の音がガサガサと響く。
まずは藁を加工するために延圧する「藁打ち」作業から始める。藁には水を含ませ、折れないようにする。使われるのは随分レトロな機械だ。注連縄で一番長いのは24mあるものも。編む(よる)ときは、藁と藁の間に、藁を足しながら長くしてゆく。作業を始めてしばらくすると指紋が消えてツルツルになる。
現在は農家にもコンバインが普及し、直接藁に触れたり加工する機会が減っている。藁の扱い方はなかなかすぐに教えられるものではなく、10年ほどかけて若手に伝えてきた。「センスが問われるんですよ。きつくよってもダメ、弱すぎてもダメで、均質に作れなければ。やり直させることもあります」。
三橋さんが金子会長から寒川神社御本殿の「大注連縄(おおしめなわ)」作りを任されたのは、もう10年以上前の事。3年に1度しかない作業で、今も伝統が受け継がれている。
大注連縄は中央が太くなる作りで、まずは張った綱に藁を巻きつけ、少しずつ太くし、さらに「こも」で包んでようやく1本が完成する。この太い1本を3本分「よって」、大注連縄の形にするのだ。大人数人でも持ち上げられないため、ジャッキも使う。
形になっても、これで終わりではない。相当な重量と長さがあるため、御本殿前まで、地面に触れさせずに運搬するための専用台車を製作した。一輪車用タイヤなどを取り寄せて、組み上げたという。「マニュアルなんてありません。色々な現場を調べて、作るたびに改善の連続です。ほかの神社に行くとやっぱり、注連縄が気になりますね」
2020年夏に新調されたものは重さ700㎏超、大量のもち米の藁を使った。変色しないよう屋内で乾燥させるなど3年ほどかけて準備している。御本殿に新しい大注連縄がゆっくりと上がり、設置される。見上げる職人たちの表情はどれも晴れ晴れとしていた。
同社ではこうした注連縄のほか、神社の献灯枠などの設営、さらに寺院の風景に溶け込む塀の建設なども手掛けている。
【子どもたちへ。町を守るって、こういうこと】
地域に根差すことをモットーに時々、地元っ子を招いての見学会を開く事もある。この日は「動いているところを、見せてほしい」というリクエストに応えた。大きな重機の運転席で記念撮影、迫力の動作の数々に子どもたちも一斉に注目。
※地元の幼稚園や保育園の保護者とお子様向けに見学会も企画できます。お問合せは当社まで。
【湘南の浜辺を守る 知ってますか?「養浜」】
河川の洪水や海の高波を防ぐための工事も、同社が何度か受注している工事だ。地元湘南も、台風が来るたびに強烈な高波が沿岸をえぐる。サイクリングロードなどの砂の流出や崩落を防ぐため、金属の大型カゴに石を詰めて設置してゆく。
雨の日は海岸のゴミ拾いも ただ工事するだけでなく、やるべきこと、地域にとってプラスになることは即、行動へ。
藤沢や茅ヶ崎、寒川などを流れる「小出川」も、降水量が増えると急激に水かさが増し、かつては周辺住宅街が浸水、ゴムボートが出るほどの被害を出している。川が溢れないように、堆積した土砂の掘削は欠かせない。景観面にも配慮しながら施工してゆく。
品質マネジメントの国際基準を取得
金子建材土木が品質マネジメントの国際規格「ISO9001」を取得したのは平成14年のこと。受注した工事を、社員の誰が担当しても、年月が経っても一定の品質や精度で提供し続ける、という目的があった。「やろう」と声を上げたのが金子一茂社長。工事の技術や段取りなどの明文化・マニュアル化を進めた。今では企業評価の指標として知られるが、20年前は建設業界で取り組む企業もごく少数だった
金子社長「道路の舗装だけでも奥深いんです。新しい道路を造るのに比べて、以前からある道路を直して、平坦に仕上げるのは技術と経験が要る。状況が場所によって違いますから。わずかな路面の継ぎ目も、重い車が走ると響くことがあるので、とことん段差をなくします」
「新世紀のまちづくりに貢献」
同社がカレンダーなどの印刷物で、社名の隣に置いているキャッチフレーズ。21世紀に入っても変えなかったのには理由がある。
「圏央道が開通して寒川町は大きく変わりました。今では当たり前のようなインフラですが、何十年も前に構想した人々がいて、計画を積み重ねて形にした人々がいたんです。単に便利になったと感じるだけでなく、建設業に携わる企業として常に将来を見据えて考える、そして貢献し続けなければ」
地域の社会基盤、造る思い 社員の声
同社がこうした公共工事に業務を拡大したのは50年以上前、草創期を知る三橋さんに聞いた。
三橋:当時の1日といえば、昼間は現場を駆け回り、夜は積算や翌日の準備、報告や整理に明け暮れましたね。大変な時代でした。
記者:地元ではどんな公共工事が思い出深いですか。
三橋:相模川河川敷にある、川とのふれあい公園の野球場ですね。最初は畑というか、凄い凸凹の土地でしたが全部整地したんです。
記者:今ではすっかり地元で愛される公園です。ショベルカーを使って整地といっても、施工する現場によって様々でしょう。
三橋:土の中は多様ですね。ヨシなどの植物や泥が堆積してできた柔らかい土地や、砂利の多い河原もある。逆に崩れにくい赤土層もある。掘ってみなければ分からない部分もある。それは色々と経験しました。
施工管理を担当する佐藤さんは平成6年入社で、30年近くのベテランだ。
「当社は公共物も造ります。やっぱり皆さんが使いますから品質の良いものを提供したいですね。最後に行政による評価もはっきり出ます。発注者や関連会社、近隣の協力を得ながら、事故なくやりきった時の達成感は・・言葉にできないですね。日々経験を積める、手ごたえがある仕事です」。
若手に聞いてみた 「私が金子建材土木に入社して」
金子建材土木では不定期に人材も募集している。なかなか求人欄では分からない、仕事の中身について、入社13年目の若手社員・重原さんに聞いた。
記者:入った頃はどうでしたか。どんな印象でしたか?
重原:派遣会社からの転職で、今まで経験のない職種でした。初日は神社の庭園の建設現場の手伝いでした。右も左も分かりませんでしたが、先輩が丁寧に教えてくれました。今まであまり知らなかった神社の建物についても知識が入ってきましたね。
記者:河川や道路などを見る目は、変わりますか?
重原:地面の様々な深さに、ガスや下水、雨水やNTT関連など様々な機能があります。
普段車で道を走っていても、施工した場所を見ると色々思い出がよみがえります。
記者:現在はどんなお仕事を担当されていますか
重原:工事主任として現場管理を担当しています。工程を計画して、材料や人員などを手配します。近隣事業所との調整を図ったり、迂回路を設定したり、誘導看板の設置を決めたり、誘導員の手配などを行います。
記者:寒川や茅ヶ崎の、主要道路を担当した事はありますか。
重原:産業道路の複雑な交差点での工事が思い出深いです。幹線道で交通量も多く、地域に物流ターミナルがあり、丁寧な広報を心がけました。
さらに質の高い工事を
記者:施工や仕上がりなども、チェックするんですか。
重原:そうですね。行政など発注元が、完成の基準や目標を示すので、限りなくそれに近づけなければなりません。例えば、道路に下水管を入れる工事であれば、施工の後半に、埋め戻し材を入れアスファルトを敷いて固めます。その際の「転圧」や締め固めの「厚さ・幅」など仕上げの種類も様々で、技術力が問われます。
記者:産業道路もよく走りますが、暮らしの根本インフラだからこそ、完璧に・・という責任も大きいでしょうね。ちなみに、オフの日はどんなことをして過ごしていますか
重原:たまに大型バイクで富士や日光をツーリングしています。
次世代の金子建材を担う人材よ、来たれ
金子建材土木では不定期に正社員を募集している。転職でこの道に入った社員も多く、先輩社員が1から指導し、現場のプロフェッショナルに育てる社風だ。募集条項など詳しくは下記にご連絡を。