この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです
日本人の平均寿命は男女とも80歳を超え、超高齢社会となっています。これからの大きな課題は介護に頼らず、自分で最低限の生活ができる「健康寿命」を伸ばすことです。それには歯も密接に関わっています。
20年ほど前、身体の状態を調べた結果、無歯顎で入れ歯を装着していなかった人は20本以上機能する歯がある人に比べ、歩行困難などの身体的障害発現のリスクが約6倍、死亡リスクが1・8倍になることが報告されました。そして、2009年には、機能する歯が10本以上ある人は10本以下の人に比べて15年後の生命予後が良いというデータまでもが示されました。
東北大学大学院歯学研究科は、そのような先行研究をもとに2017年に全国24自治体の要介護認定を受けていない高齢者(65歳以上・約7万7千人)を3年間追跡したデータを分析し、要介護になる前の歯の本数と、寿命・健康寿命・要介護でいる期間の関連を調べました。その結果、歯が多いほど健康寿命が長く、要介護でいる期間が短いことが明らかになりました。
1本でも多くの歯を残すために日ごろから歯科医院で歯周病や虫歯の治療、定期メンテナンスを行うのはもちろん、すでに多くの歯を失っている場合でもしっかりと噛める入れ歯などで口腔機能を回復することにより健康寿命・寿命をともに長くできます。お口の環境を整えることで元気な生活をしましょう。