「無人島」──。その言葉の響きに、冒険心を掻き立てられるのは私だけではないはず。
東京湾には、横須賀を代表する唯一の自然島「猿島」があります。夜間の立ち入りが制限されており、定住者がいないことから無人島という位置づけですが、バーベキューや釣り、レンガ積みトンネルなどの歴史遺産散策に年間約20万人が訪れる一大レジャースポットとなっており、私がイメージするそれとは少し趣が異なります。
明治時代に建造された首都防衛のための要塞
もっとディープな無人島体験がしたい、そう思っていた矢先、願いを叶えてくれるモニターツアーを発見しました! 東京湾海堡ツーリズム機構が主催する「第二海堡(かいほう)防災サバイバルキャンプ」。
東京湾に浮かぶ日本最古の人工島である第二海堡でアウトドアのスキルと道具を上手に活用して、いざいという時に役立つテクニックを学ぶ内容です。これは〝参加しない〟という選択肢はないでしょう。
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島の位置。左が横須賀市、右が千葉県富津市
横須賀市にある三笠桟橋から出航するチャーター船に揺られること30分、豪華客船にコンテナ船、タンカーや漁船とすれ違う様から東京湾が海上交通の要衝であることを実感できます。船上で見たことのないスケールの大型船の迫力に圧倒されているうちに到着。
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ブーメラン型をした島の全景。面積は約4万1千㎡
ブーメラン型をしたかつての要塞に上陸すると、当時の面影を今に伝えるレンガづくりの構造物や砲台跡がそこここに。視界の開けた観測台に立ち、凍てつく北風にさらされていると、周囲に遮るものがなにもない洋上の孤島であることを全身で理解することができます。
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中央部にある砲塔観測台からの眺め
キャンプを楽しむ感覚で防災スキルを身に付ける
防災キャンプは、アウトドアライフアドバイザーとして活躍する寒川一(さんがわ・はじめ)さんがコーディネーター役。
泥水を飲料水に変える簡易浄水器の使い方から始まり、摩擦熱による火花で着火させるメタルマッチのコツ、牛乳パックを燃料に燃焼効率に優れたケリー・ケトルを用いた湯沸かし、ジップロックで米を炊く方法などをワークショップ形式で学ぶ内容でした。
どれも災害時に生きのびるための実践的なテクニックばかりで、参加者はキャンプを楽しむ感覚で取り組んでいました。
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写真右の男性が、アウトドアライフアドバイザーの寒川一さん
「映える」空間でジャズの生ライブ
このほかに、東京湾の夕日を眺めながら、ジャズの生演奏を楽しむライブに焚き火を囲んで語らうトークタイム、満天の星をガイドの案内で楽しむ星空観察と盛沢山のメニューを楽しむことに。
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早稲田大学モダンジャズ研究会のメンバーによるジャズライブ。どんなに大きな音を出しても周囲の迷惑にならないのは無人島の利点
- 今回のモニターツアーは、2019年4月からスタートした「第二海堡上陸見学ツアー」の新しいコンテンツメニューを作り出すための実証実験。夜間利用などの実現可能性を探るためのものでした。
2021年6月には人気アーティスト「King Gnu」がライブを行うなど、注目のスポットになっていくことは間違いなさそう。新しい観光のスタイルを予感させる貴重な体験となりました。
《東京湾に浮かぶ日本最古の人工島「第二海堡」防災サバイバルキャンプ モニターツアー/2022年1月11日実施》