この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです
「顎骨壊死」という言葉を聞いたことがありますか?
顎骨壊死とはあごの骨が腐った状態になり、あごの痛みや腫れ、膿が出てくるなどの症状が出ることです。骨吸収を抑制する薬剤などに関連して生じ、特に骨粗鬆症やがん患者さんの骨転移に使用されるビスホスホネートやデノスマブなどの薬剤に関連して引き起こされます。
顎骨壊死は抜歯のような外科的な処置後による報告が多いですが、合わない入れ歯や歯周病など、口の中に炎症や感染があると自然に発症することも知られています。
ただ、いたずらに顎骨壊死を怖がる必要はありません。顎骨壊死は口腔外科疾患の中でも稀に起こる病態で、口腔細菌による感染症がなければ発生しません。口腔内には無数の細菌が存在しており、常にリスクが高い状態です。
大切なのはお口の環境を整えることと、主治医である医師と歯科医師が緊密に連携することで予防が可能です。元の病気の治療が優先されるべきことが多いので自己判断で薬をやめるのは絶対にやめてください。また、既に症状がある方についてはかかりつけの口腔外科医へ相談することをお勧めいたします。気軽に相談できる歯科医院をもち、定期的な歯科検診とお口のメンテナンスを欠かさないようにして、むし歯だけでなく様々な口腔疾患を予防しましょう。