街でよく見かけるバス広告。中でも、「車体全体に描かれている広告は、どんな風に作られているの??」「ペンキで直接、塗装しているの?」と疑問に感じている人も多いはず。
実は、広告やデザインを印刷した「特殊フィルム」を貼り付けたもので、一般的には「ラッピングバス」と呼ばれているそうです。
今回、「#ちがすき」では、茅ヶ崎市内を走る路線バスに、新たにラッピングを施すとの情報を聞きつけ、潜入取材!「神奈川中央交通 茅ヶ崎営業所」を訪れました。
下準備が肝心!念入りに車体磨き
3月下旬。高田にある神奈中バスさんを訪れたのは、なんと早朝5時!
しかし、真っ暗な寒空の下、駐車場にはすでに始発バスのエンジン音が響きわたり、運転士さんも車体点検や出発準備に勤しんでいました。
そして、整備工場には、カーラッピング業者の職人さんの姿が。聞けば、この前に駅で一仕事を終えているというから、驚きですね!
4人の職人さんが念入りに行っていたのは、柔らかなタオルで車体を磨く作業。「汚れやホコリが残っていると、ラッピングした時に空気が入り込んだり、凸凹になってしまうため、しっかりと拭き取ります」
ラッピングするのは、社長のイラストでお馴染みの「翼工業」!
この日、ラッピングするのは、茅ヶ崎市南湖の塗装会社「(株)翼工業」さんの広告。竹之内謙社長と、保護犬の「チルチル」「ぽっか」のイラストは、野点看板や広報紙で見かけたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
プランは窓下までの「ハーフラッピング」。全長約10mのバスの車体側面と後面の計3面に貼り付けます。ちなみに、前面まで貼ってしまうと、バス会社が分からなくなるため、前面は施さないのが一般的だそうです。
そして、細長い箱から取り出されたのは、広告が印刷されたロール状のフィルム。
特殊加工され、紫外線や雨風、高低温などの過酷な条件下でも使用できる優れものです。
横幅は120cmほどで、裏面はシール状になっています。
予め作成された「完成図面」をもとに、マグネットや養生テープで仮止めしていきます。窓枠と並行に合わせていくのがポイントのようです。
真ん中に顔のイラスト!セッティングは慎重に
今回、一番の難所ともいえるのが、後方部分。
顔のイラストが、車体の中央にデザインされており、さらにフィルムは2枚に分かれているため、顔部分は鼻から真っ二つ。当然、貼り間違やわずかなズレも許されません…!
綿密に位置を決めたら、そこからは一気に張る作業に!後部を走る車からも、よく見える部分だけに、緊張が走ります。
しかし、そんな心配もなんのその。その動きには、一片の迷いも見られません。
長年の経験と感覚をもとに、無駄な動き一つなく、手際良く貼り続けています。ペアで声を掛け合うこともないのに、息もぴったり。4人とも、ものすごい集中力で、黙々とてきぱきと動きまわっています。
さらには、テールランプや乗降ランプ、ナンバープレート部分も、カッターで綺麗に切り抜いていく職人技は、お見事としか言えません!
ゴムベラを走らせ、空気を抜いて、どんどん密着させます。
ここまでの工程で、作業時間はたったの15分ほど。手分けして側面も同時に作業。とにかく仕事が素早いです!
背面が完成!「想定以上にクオリティが高い」
背面が完成!
20年以上、外壁塗装を手掛けてきた職人でもある竹之内社長からも、思わずリスペクトの声が漏れます。「想定以上にクオリティが高いですね」
まだまだ職人技が光ります!
こんな細かいランプ部分や、凹凸部分もしっかりとくりぬいています。大変そうです…。
おっと?ドライヤーみたいなものを当てていますが…?
「この時期、車体が冷えているので、熱を加えることでフィルムの糊をしっかりと付けていきます」。車体のナンバープレートや部品部分などに合わせてくり抜いたところは剥がれやすいので、念入りに密着させるそうです。
自動の乗降ドアは特に念入りに。剥がれたら大変です!!
作業が完了!走り回るバスで「茅ヶ崎の皆さんに感謝をお伝えできたら」
その後、60分ほどで、左側面の貼り付けが完了しました!全体の所要時間は、2時間足らず。
看板犬が刷毛を持っているのも可愛いですね。実はこの2匹のチワワは、心身共に傷ついた保護犬で、竹之内夫妻が引き取って大切に育てているそうです。
ワンコたちがペンキでお絵描きをしているデザインから、ご夫妻のやさしさがにじみ出ています。
今回、竹之内社長がラッピングバスに託したのは、茅ヶ崎への恩返しの気持ちです。感謝塗装(ありがとそう)と大きく描かれています。
先輩職人の下で技術を磨き、たたき上げで13年前に創業した同社。「下積み時代から今まで、地元の茅ヶ崎の皆さんに育てていただきました。ご安心・満足いただける外壁塗装で恩返しができたら」
翼工業のラッピングバスは、3月19日から茅ヶ崎市内を運行しています。こうした舞台裏を知ると、とても親近感が湧くし、車体全面に趣向を凝らしたデザインやカラーリングは、見ているだけでも楽しくなります。街で見かけたら、ぜひ詳しく見てみてくださいね。