中区のホテルニューグランドで6月から「プリン・ア・ラ・モード パフェ」の提供が始まった。横浜の戦後の歴史の中で誕生したデザートが、昭和から令和へと時代に合わせた装いで変化を遂げ、新たな伝統を築いている。
プリン・ア・ラ・モードは、戦後同ホテルがGHQに接収され米軍高級将校の宿舎となっていた時代に、ホテルに滞在していた将校夫人を喜ばせたいという思いから誕生したデザート。米国人に合わせてプリンだけでなく、アイスクリームやアメリカから送られてきた缶詰の果物などを組合せてボリュームを出した。従来のデザート皿に乗りきらなかったことから、クルトンを乗せるための幅広の「コルトンディッシュ」(ニューグランドの独自の呼び方で、通常はバナナサンデー)に盛り付けられたという。
横から縦へ
今回販売を開始したメニューは、そんな伝統の発祥デザートをパフェスタイルにアレンジしたもの。「横に盛り付けたプリンアラモードを縦にしてみては」という青木宏一郎総支配人のアイデアを、エグゼクティブペストリーシェフの後藤比呂志さんが形にした。「伝統の素材を生かしつつ新しさを」と考え、試行錯誤の連続だったという。
完成したパフェは、開業時から変わらない主役のプリンと名脇役のプルーン、サクサク食感のクレープ生地や自家製バニラアイス、リンゴゼリーなどを重ね、果物は断面の美しさを際立たせるため苺を加えた。りんごを現在のうさぎ型ではなく当時のアローカットにして高さを出したり、一番下にカラメルを敷いて最後にプリンアラモードを食べていたことを思い出させる工夫も。「層ごとの様々な食感や味が楽しめるのはパフェならでは」と後藤さん。
現代の「流行」を
青木総支配人は今回のメニュー開発にあたり「ホテルの歴史を次の世代につなげるため、伝統を継承するだけでなく新しい挑戦が必要だと思った」と話す。そもそも名前に使われているア・ラ・モードは、フランス語で『流行の・現代風の』といった意味。「今の人が考える『アラモード』な盛り付けってどんなものだろう」と興味が湧いたという。
そんな伝統メニューにアレンジを加えるきっかけが、90周年記念で販売した「90thプリン ア ラ モード」=写真中央=だった。若手女性社員から出たアイデアをワンプレートにまとめたものだったが、食べ比べ需要を喚起するなど相乗効果で人気が出た結果、今ではレギュラーメニューに。その時の経験が今回のパフェ誕生につながっている。
「昭和、平成、令和の『プリンアラモード3姉妹』。ぜひ食べ比べしてもらえたら」と同ホテル。本館1階の「ザ・カフェ」で、価格は税込み1980円(サ別)。