早いもので7月に入り、世の中の子どもたちはまもなく夏休みに突入します。私の小学生時代の夏休みの思い出といえば、「真っ黒に日焼けするほど通った市民プール!」…ではなく、その帰路にある駄菓子屋への寄り道でした。くじ付きの飴やガム・スナック菓子など、子どもながらその日の気分で限られたお小遣いとにらめっこしながら買い物することが、とても楽しかったことを今でも覚えています。そういえば最後に駄菓子屋へ行ったのはいつだったっけ?
少子化が影響して昔ながらの駄菓子屋が無くなっていたり、ロングセラー商品が生産終了したり。近年、駄菓子屋を取り巻く環境が変化しているという話を時々耳にするので、気になって「横須賀市 駄菓子屋」と検索してみたところ、半世紀以上愛され続ける老舗やカフェを併設したオープン間もない店など、さまざまなスタイルがあるようで…?
- 職場体験でタウンニュース横須賀編集室を訪れていた田浦中学校2年生の柏﨑泰兵さん・鯨岡琉太さんと一緒に調査してきました!2人が撮影してくれた写真と感想を織り交ぜてご紹介します。
変遷を見てきた、3代続く菓子問屋
まず、向かったのは玩具・菓子問屋の「福吉屋商店」(安浦町2-25)。
扉を開けると早速、棚やテーブルにうず高く積まれた駄菓子の数々が出迎えてくれました。問屋ということもあって、オーソドックスなものから、SNSでブームになった商品や人気アニメのイラストが描かれた商品など、品ぞろえ豊富。どれも大袋や箱入っているのが特徴です。
駄菓子屋に卸すだけでなく、個人の「大人買い」にも対応しているので、実際にやるかはさておき「お腹いっぱいになるまで食べたい!」「お小遣いを気にせず好きなものを好きなだけ買いたい!」という子どもの頃の夢を叶えることができますよ。
現在3代目店主が切り盛りする同店。高校の文化祭・子ども会・夏祭りなどへの販売も多かったとのことで、コロナ禍のイベント中止による影響は大きいと言います。しかし、その一方で若いオーナーが新たに開業する店もあって「横須賀の駄菓子屋文化の盛り上がりが楽しみ」と話していました。
中学生ひとことMEMO
・よくここで菓子を買ったという人が大人になって、子どもを連れてまた買いに来ることも。それほど人気で、思い出のお店なのだろう
・花火や光るおもちゃなど、駄菓子以外にもたくさんの商品が並んでいた
多世代が集う駄菓子屋カフェ
次に訪れたのは、福吉屋で情報を得た若手オーナーの店、鶴久保小学校前にある「つなぐカフェ」(佐野町2-1)。“カフェ”との名前に侮るなかれ。陳列された駄菓子のラインナップは市内屈指です。上町から2022年5月に移転したばかりですが、連日学校終わりの子どもたちで大にぎわい。「ランドセル置いたら駄菓子屋集合」は、令和の小学生にも脈々と引き継がれているのですね…。
子どもたちでごった返す放課後までの時間は、とても静か。軽食もあるのでカフェスペースでは小さな子ども連れのお母さんが、束の間のんびり過ごす姿も見られました。駄菓子をつまみながら、お茶を一服というリフレッシュタイムもいいですね!
中学生ひとことMEMO
・駄菓子以外にも、ドリンクやアイス、クレープ、おにぎりなどが並んでいた
・子どもを連れたお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんなどみんなの居場所になっている
主力商品は懐かしのポン菓子
駄菓子と一口に言っても種類はさまざま。そのなかで、手づくりポン菓子を扱う店が京急大津駅前にあります。その名も「おくつろぎ処ぽんがし屋」(大津町2-15-2)。ポン菓子に魅了されて小型製造機まで持つ店主が、「もっと多くの人に良さを知ってほしい」と営業を始めたお店です。
ポン菓子とは、米に圧力をかけたあと一気に開放することで膨らませた米菓子。サクサクと軽い食感が特徴的で、「バクダン」などとも呼ばれています。機械はおもに土日に稼働していて、タイミングがいいと実演を見ることができるそう。出来立てはきっと香ばしくておいしいんだろうなぁ!
コンパクトな店内の壁一面におもちゃのくじが所せましと並び、さらには「総菜なども扱っているんです」とショーケースを指さす店主。こちらは地元の主婦らに人気なのだとか。駄菓子屋で総菜!?これは新しいタイプのお店!
中学生ひとことMEMO
・自分がやりたい仕事に一生懸命に取り組んでいてすごい!
・子どもからお年寄りまで、地域の人々を助けてくれる存在
子どもたちの声が原動力
「晴美商会」(汐見台2-14-6)は、高台の住宅地にひっそり佇む昔ながらの駄菓子屋。「いつから始めたっけねぇ…旦那が始めて…50年以上前かしら」と女将さん。かつては模型(プラモデル)を豊富に取り揃えていて、足繫く通うファンもいたと言います。確かに、店内を見渡すとそこかしこにプラモデルの箱が積まれ、名残りがあります。
近くには団地も立ち並んでいますが、昔に比べると訪れる子どもは激減。「そろそろやめようかと思うこともあるけれど、『やめないで』という声に支えられている」と話してくれました。そんな思いから、2020年にはNPO法人と連携して、新型コロナウイルスの影響で外出自粛を強いられた子どもたちのために駄菓子セットを寄付。こうした心温まる交流が生まれるのも駄菓子屋のいいところですね。
中学生ひとことMEMO
・プラモデルの箱がたくさん並んでいた
・地域に愛されているお店。自分の家の近くにもあったらいいなと思った
これぞ王道!古き良き駄菓子屋
場所は変わって西地区の長井。三崎街道沿いに店を構える「志村菓子店」(長井1-80-11)へ。入口には年季の入ったカプセル玩具やアイドルのポスター、コーラの保冷機などがあり、いかにも王道の〝THE駄菓子屋〟といった外観です。
「昔に比べれば少なくなったけれど、子どもたちの声で店がにぎやかになる時にやりがいを感じる」と2代目店主。来店客に喜んでもらおうと、新しい商品も積極的に仕入れているそう。畑や漁港といったのどかな風景が広がる長井らしい、のんびりとした時間が流れており、古き良き時代の面影を感じることができます。
中学生ひとことMEMO
・見た目は古いけど、それこそが魅力
・年中無休で続けていてすごい
扉を開ければ昭和にタイムスリップ
最後にやってきたのは、2020年6月にオープンしたばかりのニューフェイス。ソレイユの丘にほど近い「六丁目横丁」です。事前情報では昭和レトロ風喫茶と聞いていたのですが、第一印象は「店の中に町がある!?」でした。
スナック、理容店、食堂、呑み処などの看板が並び、2階の窓からは洗濯物がぶら下がっていたり、ダイヤル式の電話が置かれていたりアミューズメントパークさながら。聞けば「ALWAYS3丁目の夕日」好きの店主が、1年以上かけて自らの手でリノベーションした手づくりの空間だそうです。
こうした店内の一角に駄菓子コーナーが設けられ、冬はチョコ系多めといったように季節ごとに商品に変化を持たせる工夫が人気を支えているのでしょうね!
中学生ひとことMEMO
・地域の人だけでなく観光客も多い
・昭和にタイムスリップしたような店内。自分たちで作ったとは思えないクオリティの高さ
今回紹介したのは6カ所でしたが、じつは定休日や営業時間外でやむなく取材を諦めた店もあり、横須賀市内にはまだまだ多くの駄菓子屋が存在していることが分かりました。それぞれのスタイルで地域に愛されている駄菓子屋が、この先10年・20年と長く続くことを願ってやみません。