この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです
口腔乾燥症(ドライマウス)は唾液量の低下で生じ、潜在患者数は約800万人とも3000万人ともいわれます。口腔乾燥は加齢、服用薬、シェーグレン症候群、頭頸部の放射線治療、糖尿病など多彩な全身疾患に関連しています。
唾液の分泌量は1日あたり約1~1・5リットルとされ、抗菌物質や保湿成分、免疫成分を含み、消化作用や粘膜保護作用など口腔環境を維持する上で重要な役割を担っています。
加齢と共に唾液分泌量は減少しますが、服用薬の副反応として口腔乾燥が報告されている薬剤も数多くあります。唾液の分泌が減少するとむし歯や口臭の悪化、味覚や嚥下、会話の障害などが現れます。治療には唾液腺マッサージ、消炎効果のあるうがい薬、口腔保湿剤の使用、漢方薬などがありますが、唾液の分泌量を自然に急増加させることは難しいです。
これから冬に向けて乾燥する季節になります。口腔乾燥症を予防するには、唾液が出やすくなる習慣作りと乾燥対策を心がけることが大切です。適切な生活習慣を続ける他、唾液腺マッサージ、加湿器の使用など日常的に試みましょう。口腔内の環境を整えることも大切です。よく噛める入れ歯を使い、ケアをしっかり行いましょう。気になる症状がある方は、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患が隠れていることもあるので、かかりつけの口腔外科で精査をお勧めします。