浄妙寺は、1188年源頼朝の忠臣、足利義兼(よしかね)により創建された鎌倉五山第五位の名刹(めいさつ)である。足利尊氏の父・弟の墓所であり、大化の改新の立役者、藤原鎌足(かまたり)縁(ゆかり)の鎌足稲荷や、枯山水の庭園を伴う喜泉庵(きせんあん)(茶室)など見どころも数多い。
ここに咲く花といえば、早春の頃は節分草(せつぶんそう)。本堂の前庭や喜泉庵前などで、清楚な白い花を咲かせる。また、本堂周辺や裏山の散策路(山あじさい小径(こみち))では、淡紫色の小さな雪割一華(ゆきわりいちげ)も楚々として咲く。そして梅。前庭では、樹形の整った紅白の梅が咲き揃い、緑青色の銅葺き屋根とのコントラストが美しい。
本堂前では、枝ぶりのよい山茱萸(さんしゅゆ)が沢山の黄色い花を付ける。また、本堂左では、万作の木々も黄色い花を咲かせる。かたや、境内の其処此処(そこここ)では、大きく育った椿の木々が真っ赤な花を付ける。さらに、散策路の入口では、濃桃色、白、淡桃色の3種の桜が美の競演を見せてくれる。
門前の桜(染井吉野)が新緑の色を増す頃には、本堂左で鎌足縁の鎌足桜がほころび始める。薄紅色の八重の花々は、木々の緑に美しく映える。鎌足桜近くの白藤も、房を伸ばし甘い香りを放つ中、その傍らでは、赤やピンクなど色鮮やかな牡丹(ぼたん)も咲き始め る。
また、本堂前の躑躅(つつじ)が白や紫などの花を付ける頃には、石楠花(しゃくなげ)や山吹も咲き始め、境内は色とりどりの花々で賑わう。
石塚裕之