この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです
今回は、顔面神経の病気、よく聞く『顔面神経麻痺』のお話です。前回取り上げた三叉神経と混同しやすい2つの神経ですが、三叉神経は感覚の神経、顔面神経は顔の表情を動かす神経で、その働きが全く違います。顔面神経麻痺を起こすと①おでこのしわ寄せができない②強く目を閉じても閉じ切らない③イーと歯を見せることができない、という顔の表情に障害が出てきます。
顔面神経は他の脳神経よりも長く細い管を経由して出てくるため、比較的軽い神経損傷でも症状が重くなりやすいです。さらにその管の周囲にはウイルスが存在する神経節があるためウイルス性の麻痺が生じやすいという特徴があります。原因は様々ですが、ウイルス性と怪我などの外傷で起こるものが顔面神経麻痺全体の約8割を超え、毎年5万人以上が発症しているといわれています。
神経がむくむことで顔面神経麻痺を発症するので、治療には炎症や浮腫を軽減させるステロイド治療が中心となります。またウイルス性の顔面神経麻痺については、以前お話したヘルペスや帯状疱疹ウイルスの増殖を抑えなければならないので、抗ウイルス薬を投与することもあります。
どちらにしても顔面神経麻痺を疑った場合は、早期に治療を開始することが大切です。治療は耳鼻咽喉科が主になりますが、気になることがある際はかかりつけの口腔外科でもお気軽にご相談を。