築地本願寺の川崎多摩布教所
川崎市多摩区中野島にある「慶念寺」(小林賢五住職)は、2016年に開所した浄土真宗本願寺派の川崎多摩布教所です。
小林住職は多摩区登戸にある浄土真宗本願寺派の古刹「長念寺」の次男として1987年に出生し、多摩区で育ちました。実家は長く続く由緒あるお寺でしたが、あまり宗教活動には関わりを持たずに育ったそう。
ただ、「受けるだけは」と本願寺派の宗門校である京都の龍谷大学を受験したところ、縁あって同大史学科に入学。20歳のときに得度し、卒業後は同大大学院で実践真宗学を専攻。修了後、築地本願寺で研修を受け、「都市開教」の専従員として、生まれ育った地に慶念寺を開きました。
慶念寺は、JR登戸駅とJR中野島駅のちょうど真ん中あたりに位置しています。お寺といっても、見た目はタイル張りで3階建ての普通の住宅。ただ、1階にある大きな窓を開けて中に入ると、そこには二間続きの本堂があつらわれ、正面にはご本尊である阿弥陀如来立像が立派に祀られています。
ご本尊は徳川家にゆかり
このご本尊、2023年11月に慶念寺に新しくお迎えしたのですが、実は松平家・徳川将軍家の菩提寺として知られる成道山大樹寺(愛知県岡崎市)に由来する木像であるという記録が見つかっています。
それまでのご本尊(阿弥陀如来)は、真宗大谷派光西寺(長崎県)から譲り受けた江戸時代から明治初期の仏像で、継ぎ目のない「一木造り」で仕上げられた希少な木像でした。
ただ、浄土真宗本願寺派の定める基準に合わなかったため、慶念寺では三重県の寺院から木像を迎え入れることにしました。しかし、木像には欠損やゆがみなどが見られたため、小林住職は京都の仏師に修復を依頼しました。
仏師が寄木造りの像を一度解体したところ、本体の内側に文章が記され、さらに中には和紙で何重にも覆われた巻物も収められていました。内側の文章を小林住職が調べると、木像の制作年代が正保3(1646)年、三代目将軍・徳川家光の時代であることが書かれており、また、阿弥陀如来をあらわす梵字や経文、由緒なども記されていたことから、三河額田群成道山大樹寺で作られ、子院である善揚院に移されたらしいとわかったのです。
また、巻物を調べると、「當寺本尊縁起」と題する文書が。これは慶安2(1649)年に書かれたものとみられ、小林住職は「作った3年後に補修のため一度像を開け、その時に中に巻物を入れたのでは」と推測しました。知人の僧らの協力のもと解読した結果、巻物は愛知県・城宝寺の当時の主僧が書いたもので、その僧が隠居寺として建てた「萬松寺」に、善揚院の本尊だった木像を迎えたという内容が記されていました。
その後、木像は三重県の浄土真宗本願寺派の寺院に遷座。巡り合わせで、慶念寺の本尊としてお迎えすることになったのです。小林住職は、「こんなに近いところでご本尊様が拝めるお寺はなかなかないと思います。ぜひお気軽にお参りください」と話しています。
ライブで法話会
そんな慶念寺では、毎月、対面による「法話会」を開いています。「法話会は浄土真宗の教えになじんでいただく第一歩のところ。ぜひお気楽に参加していただきたいですね」と小林住職は呼びかけます。
法話会は過去の動画も残しているので、お参りができなかった人も、改めて法話を聞くことができます。慶念寺のホームページ内「オンライン法話会」より閲覧が可能です。法話会の案内はホームページの「にちにちきょうねんじ」に最新の情報を記載しています。
※「オンライン法話会」は、全ての回を公開しているわけではありません。
公開講座で「歎異抄」を読み解く
「浄土真宗の生みの親、親鸞聖人の語録を皆さまに味わっていただきたい」。そんな思いのもと、慶念寺では、築地にある法重寺(ほうじゅうじ)の住職、南條了瑛師を講師に招き、多摩市民館の会議室で「歎異抄(たんにしょう)から学ぶ」という公開講座も定期的に開催しています。
書籍『大きな字の歎異抄』(本願寺出版社)を基に、鎌倉時代の仏教書「歎異抄」を読み解くという好評の講座で、ほぼ毎回、定員に達します。開催予告などはホームページなどで告知しているので、こちらも気軽にご参加を。
かかりつけのお寺に
近年は葬儀の簡素化傾向が顕著に見られ、感染症の拡大なども相まって、技術の発展とともに安価で葬儀に参列する必要もなく、手軽に故人を見送ることができるインターネット葬儀の需要が増えています。しかし、仏事や法事といった儀式祭礼や、お墓、位牌、亡くなったあとのことについて、不安や心配なことがあったらどうしますか?
- 慶念寺では、電話はもちろんメール、LINE、ホームページの問い合わせフォームなどさまざまな形で、「いざ」というときの相談を受け付けています。「なくても別に困ってはいなかった。でも、あってよかった。遇えてよかった。そう思ってもらえるお寺であろうと活動しております。皆さんのかかりつけのお寺を目指しています」と小林住職は思いを語ります。
親近感あふれる、気さくなお坊さん
人懐こい語り口調と優しい笑顔、包み込むような懐の深さを感じさせる小林住職。料理が得意で、趣味はマンガやアニメーション。深夜ラジオを聴くのも好きで、それが高じてか、2023年6月・7月にはニッポン放送『徳光和夫 とくモリ!歌謡サタデー』の「徳さんとお坊さん」コーナーに出演を果たしました。「筆まめ」な一面もあり、ブログの更新が日課。仏教のことだけでなく、2人の子どもとのおもしろおかしいエピソードや地域との交流など、日々更新しています。そんな気さくで親近感のあるお坊さんのいる慶念寺へ、一度ぜひ。