この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです
今回は、歯科治療において特に気をつけなければならない「感染性心内膜炎」という病気についてお伝えいたします。
感染性心内膜炎とは、心臓の中にある弁や壁などに細菌がくっつき、巣を作ることで感染してしまう病気で、発症頻度は決して多くありませんが、なんらかの治療をしなければほぼ100%死に至る恐ろしい病気のひとつです。38℃以上の発熱が最も多い症状ですが、微熱や全く発熱がない場合もあり、多彩な症状があるため診断が難しく重篤になってから発見されることもあるので、注意が必要です。
先天的に心臓に異常がある方 ( 心室中隔欠損症など) や弁に異常がある方、人工弁置換術を受けたことがある方は、抜歯やインプラント手術などの口腔外科手術や、血液に細菌が入りやすい歯石除去などの歯科処置でも感染性心内膜炎の発症リスクが高くなるため、特に注意をしなければなりません。
そのためリスクの高い患者さまには、医科の主治医としっかり連携し、ガイドラインに沿って歯科処置の前に抗生物質の予防投薬を行います。
口腔衛生状態が悪い人にも感染性心内膜炎のリスクがあるといわれています。口腔内の状況と全身疾患は密に関連しています。歯科処置の必要性の有無に関わらず定期的にかかりつけ歯科医院でケアを行うことで、口腔だけでなく全身の健康にも意識を向け、未病を心がけましょう。