コロナ禍やSNSの普及など社会状況が目まぐるしく変化する中、いじめや不登校などが年々増加。子どもたちへの支援として、全国の学校にはスクールカウンセラーが配置されています。「カウンセラー」と聞くと、悩みを聞いてくれる人なのかな?というイメージがありますが、どんなお仕事なのでしょうか。意外と知られていないスクールカウンセラーについて、横浜市に取材をしてきました。(取材日/2024年5月29日・情報はこの時点のものです)
【目次】
◎横浜では全市立小学校・中学校・高等学校に配置
◎スクールカウンセラーに直撃インタビュー
◎「宝探し」のような仕事
◎横浜市ならではの「働きやすさ」も
横浜では全市立小学校・中学校・高等学校に配置
スクールカウンセラー(SC)は、臨床心理士や公認心理師などの専門的な知識・技術をもち、学校に通う子どもたちや保護者を支える心の専門家です。
横浜市教育委員会では1995(平成7)年から学校にスクールカウンセラーをいち早く導入。2017(平成29)年からは、市内の全ての市立小学校(340校)と中学校(146校)、高等学校(11校)に配置し、約150人のスクールカウンセラーが活躍しています。
スクールカウンセラーに直撃インタビュー
学校ではどんなことをしているのでしょうか?
どんな相談ができるのか聞くと、学校生活や勉強、友達、家族とのことなど何でもOKとのこと。子どもだけでなく、親子同席や保護者の相談にも応じているとのことで、心強い!相談室だったら登校できるという子もいるとか。
「子どもたちには『これくらいのことで相談なんて…』と思わずに、まずは相談に来てほしいと伝えています。悩みとまでは言えなくても、誰かに話したらスッキリすることもありますよね」
と笑顔で話すスクールカウンセラー。
先生たちにとってのスクールカウンセラーは?
「教師とは違う視点で見てもらえるのは、とても大きいと思っています。例えば不登校の子どもの支援を考えるとき、私たち教師は学校を軸に考えがちですが、スクールカウンセラーはまず子どもや家庭の状況を専門的な視点で把握してくださり、新たな視点も提示してもらえます。また、子どもや保護者は教師には言いづらいこともあると思うので、違った立場で聞いてもらえるのはありがたいですね」
また「授業やクラスの様子を担任と共有することも多く、専門的な知識をもって相談に乗ってもらえるので助かっています」、「スクールカウンセラーが学校にいるというだけで、子どもだけでなく大人たちの安心につながっていると感じています」とは、校長先生談。気になる子がいたら様子を見てもらうようお願いすることもあるとか。学校の先生にとっても頼りになる存在のようです。
スクールカウンセラーの1日のスケジュールは?
8:30 出勤後、先生たちと朝の打ち合わせ(1週間の情報を共有)
8:50~15:20 相談業務(1回の面談は約50分で1日6~8人ほど。※時間などは学校により異なります)
16:00 先生たちと夕方の振り返り
17:00 退勤
「ストレスの解消方法」など心の健康について、保健体育の授業や学校だよりを通じて情報発信することも。相談予約がない時や休み時間には校内をまわり、日頃から相談に来ている子以外にも積極的に声をかけて、いつでも相談できるような環境を作っているそうです。
「ノートの文字の様子、グループでの話し合いの様子など、相談室以外で得られる情報は支援につながる大きなヒントになります。ある時、授業中にノートを上手に取れない子どもを見ていると『もしかしたら黒板を見てから、手元を見て書くという動作が苦手なのかな』と感じました。担任の先生にお願いして試しに先生のノートのコピーを横に置いてもらったところ、だいぶ書けるように。この時はスクールカウンセラーからの見立てが支援につながりましたが、担任の先生や校長先生など様々な視点から得られた見立ての中から、子どもたちにとって一番良いものを探しています」
「宝探し」のような仕事
やりがいは?
「子どもの成長を近くで感じられること。学校に来ることが難しかった子が、『今は受験のために勉強しています』という近況を保護者から聞くことがあったりすると嬉しいですね。病院や民間施設のカウンセラーとは違い、学校は全ての子どもに関われる場所。その中で支援ができることはスクールカウンセラーの魅力の一つです」
また別のスクールカウンセラーは「朝起きて学校に来ることが、できて当たり前っていうかもしれないけどそうじゃない。努力して来ていたら、その子にとってはすごいこと。先生は見落としてしまっていたことでも、スクールカウンセラーが視点を変えて見ることで気付くことがある。子どもたちには本人も気が付いていないような、良いところや伸びしろがたくさんあるんです。そんなキラキラ輝く宝物を一緒に見つけて喜び合える。宝探しのようなお仕事です」と語ってくれました。
- 確かに親目線だと、つい子どもの「ちょっとしたすごいこと」を見落としがちだったりします(…反省)。担任でも親でもない子どもを見守る大人の一人として、スクールカウンセラーの言葉は子どもたちが次に一歩踏み出す大きな力になっているはずです。
「無理に励ましたり、褒めたりすることはせず、ほんの小さなことでも、子どもたちの中にあるものは良い環境さえ作ってあげられれば育っていく」とハッとするようなお話も。子どもの成長には、まさに宝物を「見つける」感覚が大切なのだと思わされました。
横浜市ならではの「働きやすさ」も
学校に「専任の先生」がいる
横浜市には、児童支援専任教諭(小学校)と生徒指導専任教諭(中学校)が配置されています。学級担任をせず、児童生徒の支援や指導に専任する先生のことで、校内全体のことを把握しています。ちなみに小学校に専任教諭を置いているのは横浜だけだそう。中学校も含めて全校に配置しているのは大きな特徴です。
「専任の先生のおかげで『忙しくて先生が捕まらない』ということもなく、連携もスムーズです。子どもたちの課題に対しては、スクールカウンセラー、専任教諭、担任や養護教諭など、チームとしての対応が欠かせません」
- 横浜市の学校に子どもを通わせていながら今回「専任の先生」という存在を初めて知りました。スクールカウンセラーの訪問は週に1回ということですが、不在時でも担任の先生以外で子どもたちの様子を見守り、スクールカウンセラーと連携してくれる先生がいるのは安心ですね。
近隣の小・中で同じスクールカウンセラーを配置
横浜市ではさらに、近隣の小・中学校で同じスクールカウンセラーを配置。そのため小学1年生から中学3年生まで途切れることなく支援を継続できるのも、横浜市で働く大きな魅力の一つだとか。「実際に小学校の時にできなかったことが中学生になって急にできる、なんてことも多いんです」。そんな子どもたちが成長する瞬間に立ち会えるのが、何より嬉しいのだとか。また、そのことを先生たちと共有することも大切な役目だと語ってくれました。
- 確かに様々な小学校から生徒が集まり、先生も保健室の養護教諭も一新されてしまう中学1年生。勉強が難しくなったり、新しい友達との関係性など思春期ということもあり不安がつきものですよね。小学校時代から見守ってくれているスクールカウンセラーの存在は、子どもたちの安心につながっているのだと感じました。
研修などの手厚いサポート
同じエリアのスクールカウンセラー同士が顔を合わせ情報交換をしたり気軽に相談し合える、横の連携を深める機会やスキルアップのために集まる機会などが年に数回開催されます。スクールカウンセラーが困った時にアドバイスを受けられる「カウンセラー統括」や「カウンセラーアドバイザー」もいるため、「カウンセラーという仕事は一人職ですが、横浜市は学校内外の連携やスクールカウンセラーへのサポートが充実しているので働きやすく、孤立を感じることもありません」。
市外の学校でスクールカウンセラーとして働いた経験がある人ほど実感できる「働きやすさ」が横浜市にはあるようです。
【横浜市のスクールカウンセラーの特徴】
- スクールカウンセラー、専任教諭、担任や養護教諭などがチームとして子どもたちをサポートする
- 小学校から中学校まで一貫して子どもたちの成長を見守れる
- スクールカウンセラー仲間やアドバイザーとのつながりがあり孤立しない
- 研修制度が充実
最後にこんな質問も!仕事をする上で大切にしていることは?
「健康…でしょうか(笑)。当たり前のことかもしれませんが、まずは私自身の心と体のコンディションを良好に保てなければ、子どもたちの心の声が聞けないと思うのです。また、心理学の領域や関連する法律なども日々変わっているので、常にアップデートしていくことが必要だと思っています」
スクールカウンセラーとお話する中で印象的だったのは「私に何かをしてもらったからではなく、自分で解決できた、自分で頑張ったと思ってもらいたいから、相談者である子どもに『ありがとう』や『助かった』とは言われないようにしている」と語ってくれたことでした。
- 今回取材をしてスクールカウンセラーの熱い思いを聞き、子どもたちの相談に乗ってくれるだけでなく、あらゆる面から心の健康をサポートしてくれる存在だということが分かりました。
一人ひとりのケースに合わせた対応は本当に大変だと思いますが、その分大きなやりがいを感じている様子も伝わってきました。
今後もスクールカウンセラーが子どもたちの成長を支えるチームの一員として活躍することで、学校が安心できる場所であり続けることを願っています。
※本記事の画像・イラストはイメージです
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