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【タウンニュース2025新春企画】藤沢市の地域医療を考える 藤沢三師会座談会

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【タウンニュース2025新春企画】藤沢市の地域医療を考える 藤沢三師会座談会

災害時対応、より強化へ 独自対策、連携で安心の地域づくり

 1年前の能登半島地震や各地の豪雨など災害は、市民生活のすぐそばにある。そんな「いざ」の時に頼りになるのが地域医療機関だ。当紙では、藤沢市医師会、藤沢市歯科医師会、藤沢市薬剤師会の「三師会」会長にインタビュー。市民を守る活動を聞いた。

三師会の災害時のご対応を教えてください。

石原 医師会の会員が災害時にどう対応するか、その指針を示す救護マニュアルを改訂しました。旧マニュアルは東日本大震災以前のもの。これまでの災害や大きな事故を踏まえ、よりスムーズに救護活動ができるようにしました。
 大きな要素は、災害時、藤沢市医師会として独自に対策本部を設置することです。自律的に動くため、震度5強で集合、震度6弱で災害対策本部を設置と基準も定めました。市の対策本部とも連携し、情報収集から効率的な救護活動まで一元管理。迅速に動けるようにしました。

永村 災害時は、救護所での活動が中心となります。入れ歯の破損や歯の痛みなどの対応、口腔ケア、歯ブラシなどの清掃用具の提供を行います。被災時、避難所でのご生活など体力的にも厳しい状況が考えられます。乗り越えるためには「食べる」ことは重要。そのためのケアです。
 大規模災害の場合は、救護所での診療も行いますが、設備が整っている歯科医院がやはりベスト。可能な限り機能している歯科医院に誘導し、適切な治療が受けられるようにします。

村上 被災地の薬局や薬剤師には多くの役割が求められます。被災者に対する医薬品の供給、医療救護所での支援活動、不足が予測される医薬品の補給の手配などです。
 災害時に使用できる医薬品は、種類や在庫が限定されます。医師が専門外の医薬品を使用するケースもあり、代替の一般用医薬品の活用が必要になることもあります。薬剤師はどのようなお薬を服用していたかを聞き取り、医師らに医薬品の選択の助言を行うなど、調剤や服薬指導にとどまらず、医薬品を適正に使用するための幅広い活動を行います。

日頃からの備え、今後の展望は。

石原 まず組織的な役割分担を明確にし、医師会会員の行動マニュアルに沿って、一人ひとりの医師が何をするかを事前に決めておくことが重要です。医師は発災から4時間は自分の医院で対応し、その後は地域救護病院と南北応急救護所に向かいます。マニュアルが絵にかいた餅にならぬよう、みな日頃から行動指針や役割を理解していくことが大事です。

永村 先ほどお話した通り、必要に応じて被害を免れた歯科医院での治療を想定すると会員医院の被災状況の把握が重要です。現在は会内の災害対策委員会が定めたマニュアルの連絡網に沿って、電話やメール、SNSなどで情報収集する仕組みです。将来的には能登半島地震で役立った情報通信技術を活用した確認システム導入も検討したいと考えています。
村上 薬の備蓄に加えて準備を進めているのが、会員薬局の開局状況の見える化です。インターネット上で平時及び災害時の営業状況が確認できる安否確認システムを導入予定です。またデジタルだけでなく災害時、地域の薬局が営業しているか否かを視覚的に確認できるよう薬局の店頭に掲示するサインの導入も検討中です。災害マニュアルも並行して改定を行い、なるべく早く準備を進める予定です。

三師会連携の取り組みはいかがでしょうか。

石原 災害時には各々の役割があり、まずは三師会でその内容を理解し、連携体制を強固にすることが重要です。歴代会長が育んできた関係を今後も生かしていきます。
 特に医師会としては、薬剤師会との連携が重要です。災害時に確保されている医薬品には限りがあります。薬剤師会の協力を得て、医薬品の確保や病院への搬送体制など連携を強めていきたいと考えています。

永村 各師会から口腔のことで避難所で困っている方がいれば、事務局や私たちに知らせていただけると、適切な対応ができます。石原会長がおっしゃられたように、地域の医療機関や行政と連携し、情報共有を密にすることが重要というのは共通認識。状況を詳しく共有できるよう、日頃からの関係づくりを大切にしたいと思います。

村上 藤沢市では、災害時に応急救護所が設置され、薬剤師も従事します。被災直後の混乱した中で薬の仕分や管理、名前が分からない薬の割り出しを行います。
 三師会と市で、備蓄薬品や衛生材料等の選定や見直しを平時より行っています。災害時に医薬品が滞りなく供給できるよう必要な医薬品を一定量薬剤師会に備蓄していますが東日本大震災では3日間薬の供給が滞ったと聞いていますので、常用薬がある方は一週間分ぐらい各自で備蓄すると良いでしょう。

市民への備えのアドバイスをお願いします。

石原 市民の方々には、日頃からかかりつけ医に行けなくなるなどの事態を想定し、持病の情報管理などをしておくことをお勧めします。病名を伝えるのは難しい場合もあるかもしれませんが、お薬手帳は非常に役立ちます。マイナンバーカードを活用すれば、災害時にも役立つ情報共有が可能になります。病名、服用中の薬、過去の大きな病気、アレルギーなどの情報をまとめておくと、医師は躊躇なく治療を行うことができます。
 これらの情報を紙のメモや携帯電話の機能を使って記録していくといいでしょう。

永村 防災グッズの中に歯ブラシを入れてください。避難所でも口腔内を清潔に保ちしっかりと「食べる」ことが大切です。また、ご高齢の方は入れ歯の管理です。被災の影響で無くされるというケースがあります。
 阪神淡路大震災までは、歯茎を休めるために入れ歯は外して寝ましょうとされていましたが、今は特に外さなくていいと研究結果が出ています。つけたまま眠っても大丈夫ですし、日頃から避難するときに忘れないよう、近くに置くようにすると安心です。

村上 お薬手帳を日頃より携帯しましょう。災害時には、お薬手帳を持っていることで服用している薬の種類が速やかに把握できるため、スムーズに適切な医療を受けることができます。
 東日本大震災では、お薬手帳の内容を確認し、処方内容が安定した慢性疾患と判断できる場合は、処方箋がなくても調剤が可能となる場合があり、お薬を迅速にお渡しすることができました。
 薬をもらった時に、お薬手帳の情報を新しいものにしておくこと。また自宅に戻れないこともあるので、お薬手帳のコピーを、離れた家族に渡しておくと良いでしょう。

最後に市民へのメッセージを。

村上 処方箋調剤以外にも、一般医薬品や健康食品を取扱う薬局を気軽に利用してほしいと思います。薬剤師会ではかかりつけ薬局として地域に貢献できる「おくすり相談薬局」事業を進めています。薬に関する相談だけでなく健康などに関するご相談も大歓迎。また、日頃からかかりつけの薬剤師をもつことでちょっとした体の変化に気づくこともあります。是非ご利用ください。

永村 災害の備えや、被災において、口腔ケアの必要性はまだまだ周知されていません。生きるということに食べることが欠かせないのと同様に、口腔ケアは重要だと考えています。防災グッズの中に歯ブラシ1本入れておく、まずはそれだけで結構ですので、市民のみなさんに意識してもらえたら嬉しいです。

石原 平常時の今こそ被災した時の我々の行動や、ご自身がどうすべきなのか考えていただけると嬉しいです。災害時の医療は負傷者に優先順位をつけて治療し、必要なら適切な病院への搬送を行います。各病院にも役割分担がありますのでご理解をお願いします。
 市や医師会としても災害時のマニュアルを公表しますので、ご家族で確認し、共有していただくこと。地域の皆さんと一緒に安全安心の備えを作り上げたいと思います。

住所

神奈川県藤沢市

公開日:2025-01-01

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