「人間を救うのは人間だ」献血活動拡大を
亀井野で総合建設業を営むとともに、日本赤十字社の常任理事、日赤の支援団体、神奈川県日赤紺綬有功会会長を務める最上重夫氏。人間を救うのは人間だ―。この理念に共鳴して日赤事業に携わること四半世紀以上。県内の医療を支える一人として話を聞いた。
2024年も最大量更新 大相撲コラボ献血
2024年4月1日付から全国で13人の日本赤十字社(本社東京港区)常任理事を務め、県日赤紺綬有功会の県会長と兼務となった最上氏。その功績として有名なのが大相撲藤沢場所と連携した献血キャンペーンだ。
「血液は保存ができず、人工的にも造ることができません。献血に頼らざるを得ないのが現状」と最上氏。ならば、と1990年の初開催から毎年、満員を示す「札止め」が出る藤沢場所との連携を思いつき2006年から実施。2024年で19回を数え、延べ324万7800ミリリットルの血液を集めた。日赤の神奈川県支部支部長を務める黒岩祐治知事も「キャンペーンの影響で血液が安定的に確保できている」と取り組みを高く評価し、日本相撲協会としても社会貢献と巡業、同時開催の貴重な成功モデルとしているという。
最上氏は「市民のみなさんの善意はもちろん、多くの企業のみなさんからの協力のおかげ」とし「人のために何かしたいという思いはみんな同じ」と笑顔をみせる。
この長年の取り組みの中、コロナ禍もあった。藤沢場所を中止としたが、献血は別。周囲との協議を重ね実施に漕ぎつけた。「感染症の影響で献血を控える人が増えてしまった。だが手術が必要な人は待ったなし。だからこそ、やらなければならないと思った」と当時の思いを語る。
2024年も過去最高の903人が来場し、29万4800ミリリットルの献血が集まった。「嬉しいことです。今後、より需要が高まることも考えられます。みなさんとともに、継続できるようこれからも尽力していきたい」と力を込める。
需要増 常任理事として改善案を提示も
自ら先頭に立ち献血活動をけん引する一方、現在の制度に対して変革が必要だと実感。「超高齢化社会で、自ずと献血人口は減少し、血液を必要とする人は増えている」と最上氏。そこで日赤に対し、9月の常任理事会で改善案を提示した。
内容は2つ。①現在の献血できる年齢を69歳から72、3歳に引き上げる②献血不適合者の割合を下げる―だ。
年齢の引き上げは高齢者とは言え元気な人が増える今、対象を拡大することで多くの人に改めて献血をしてもらう。不適合者の減少は、献血前の検査で服薬や寝不足などでできないと判断される人を減らすため献血希望者に情報を開示するという内容。量と質、両面をにらんだ改善プランだ。
日赤ではなく国の判断の部分もあるが「常任理事会の共感は得られた」と話す。
加えて海外では献血が当たり前のことが多い中、まだ若年者への周知が足りないとも考える。「献血ができる16歳より以前に、どれだけ意義のあることか訴えていきたい」と最上氏。「世界情勢を見てもたくさんの命が失われている。人間を救うのは人間だ、この想いの下、みなさんとできることをやっていきたい」と決意を語った。
- 最上重夫氏・㈱湘南営繕協会代表取締役。
藤沢生まれの藤沢育ち。幼少時の貧しさを乗り越え起業し42年。恩返しとして社を挙げて社会貢献に取り組む。
本業では小さな営繕事業から善行小学校などの大規模公共工事まで幅広く対応。医療、介護施設の建築も手掛ける。
本社・亀井野1の24の2☎0466・81・7707。