この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです。
今回は「口腔がん」についてお話しいたします。口腔がんは舌や歯ぐき、頬の内側、上顎、下顎など、口の中に生じるがんの総称です。
全てのがんのうち約1〜2%を占め、日本では年間およそ9000〜10000人が新たに診断されるとされ、近年は少しずつ増加傾向にあります。日本口腔外科学会の調査では、発生部位として舌が約45%と最も多く、続いて歯肉(上顎・下顎)が約25%、そのほか口腔底や口蓋、頬粘膜などが続きます。
初期の口腔がんは痛みが少なく、口内炎と区別しにくいことがあるため、注意が必要です。喫煙や多量飲酒、合わない入れ歯や被せ物などによる長期的な刺激もリスク要因の一つです。
早期発見が治療の結果を大きく左右するため、定期的に歯科医院を受診し、お口の変化やしこり、出血、治りにくい口内炎などが続く場合は早めに相談することが大切です。
特に舌がんは、舌の縁に多発ししこりやただれが生じやすいのが特徴です。歯肉がんでは歯ぐきが腫れたり出血しやすくなる場合があります。そして、歯がグラグラと動揺してくることもあるので、歯周病との鑑別が難しいこともあります。
口腔がんは早期に見つかれば治療の選択肢が広がり、予後も良好とされます。定期的に歯科や口腔外科を受診する習慣を身につけることが、かけがえのない口と全身の健康を守る第一歩です。