この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです。
今回はただのイビキではない、「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)についてのお話です。
SASは日本国内に約500万人の患者がいるといわれる身近な病気です。いびきが大きい、夜中に何度も目が覚める、日中に強い眠気がある。そんな症状がある方は要注意かもしれません。
放置すると高血圧や心筋梗塞、脳卒中、不整脈などの重篤な疾患を引き起こすことがあります。また集中力低下による交通事故や仕事上のトラブルにもつながり、早期発見と治療が重要です。
診断には、自宅でできる簡易検査があり、必要に応じて医療機関で一泊して行う精密検査(ポリソムノグラフィー)で詳細に調べます。治療法として、重症の方にはCPAP(シーパップ)療法が効果的で、鼻に装着したマスクから気道に空気を送り続け、無呼吸を防ぎます。
比較的軽症の場合には、歯科口腔外科で製作するマウスピースも選択肢となります。これは就寝中に下あごを前に出して固定し、気道を広げることで無呼吸やいびきを軽減する装置です。医科で診断を受けている方であればマウスピースは保険適用が可能ですが、歯がしっかりしていなければ使用できない場合があります。かかりつけ歯科での定期的なケアは欠かせません。
「たかがいびき」と思わず、少しでも気になる症状があれば早めに受診し、検査を受けることをおすすめします。