腰越の浜上町内会が63年前に火災で失った山車を再建し、7月12日(土)と13日(日)の小動神社天王祭でお披露目する。地域住民の心をつなぐ新たなシンボルに、山車再建実行委員会会長の上杉長生さんは「2年半かけて完成した。いよいよ皆様にお見せできてうれしい」と満面の笑みで話す。
腰越地域で最大規模のイベントである天王祭は、5つの町内会が引く山車が祭りの華。しかし、1962年に起きた山車小屋の火災で下町を除く4つの町内会の山車が半焼や全焼となってしまった。
浜上を除く他町内会では山車を再建できたが、世帯数が少ない浜上では資金や人材の不足などで再建が叶わなかった。上杉さんは「子どもたちから、『なんで僕らのところには山車がないの』と言われるのが心苦しかった」と振り返る。
先番の節目に
同祭では交代で主役を務める「先番(はなばん)」があり、2025年は浜上に回って来る。そこで、この節目に間に合わせようと、23年に本格的に再建に動き出した。
火災では山車のほとんどを失ったが、江戸末期に作られたという飾り彫りは、かろうじて焼失を免れていた。これを当時の自治会役員が「いつか使う時があるかも」と保存していた。

火災の跡が残る飾り彫り
再建では、現代の道路にあわせて以前よりも小型を想定していたが、飾り彫りを伊勢原市の宮大工に見せたところ、精緻な彫りの技術に「切って使うなんてとんでもない。絶対に当時の大きさで再建した方が良い」とたしなめられたという。鎌倉にちなんだ義経と弁慶の物語や、海岸沿いの町らしい海産物、長寿を祝う鶴と亀などを彫り上げた江戸期の職人の技と、現代の宮大工の技術が合わさり、高さ約5mの山車が完成した。祭りでは約30人で引く。
費用面では、地域からの寄付が約200件を越え、春に行ったクラウドファンディングの資金も合わせて約1600万円が集まった。「『今さら作るのか』という声ももちろんありました。しかし、多くの方に賛同していただき再び浜上の山車を子どもたちに見せることができる」と上杉さんは目を細める。
各町内会の山車は、12日(土)午後6時から8時30分頃の宵宮祭で腰越駅周辺に揃うほか、13日(日)は浜上、中原、土橋の山車が神輿と巡行し、神戸と下町はそれぞれの町内で展示等が行われる。