相模女子大学(相模原市南区文京)は、旧陸軍通信学校将校集会所で市登録有形文化財である同大学の建築物「茜館」を老朽化により解体することを発表した。取り壊す前に7月12日(土)、地域住民へ一般公開をする。
茜館は同大学正門近くにある。同大学が移転してくる以前は陸軍通信学校将校集会所として使用されていた。同館は市内に残る旧陸軍の遺構のひとつとして、2003年4月1日に相模原市の登録有形文化財に指定されている。
同大学が位置する場所にはもともと陸軍通信学校があった。1938年に東京市杉並区馬橋(現杉並区)から移転。終戦を迎え、その跡地に1946年、戦禍で校舎を失った帝国女子専門学校(現相模女子大学)が東京市小石川区大塚(現文京区)から移転してきた。
同大学は将校集会所の建物を引継ぎ、大学の本部棟として長く活用してきた。2008年に現在の本館の新設に伴い、事務機能も移転。旧本部棟を「茜館」と名付け、地域へ開放してきた。
生涯学習「さがみアカデミー」の会場や外国につながる子どもたちの学習支援「CEMULA」の活動拠点として使用。当時の趣を残すため「レトロな雰囲気で学べる」と地域住民から親しまれていたという。
解体が決定したのは約2年前。同大学創立125周年記念事業の一環として茜館周辺を再整備することが決まった。茜館は建設時の図面がなく耐震診断ができず、雨漏りなどの老朽化が問題となっていた。同大学は「維持していくのが難しい」と判断し、関係機関と協議し解体に至った。
同大学の風間誠史理事長は「この土地の歴史を象徴する建物であり、地域とつなぐ建物でもあった。取り壊す前に皆さんにも見ていただきたい」と呼び掛ける。
26年度、交流拠点に
茜館には旧陸軍通信学校時代から変わらない「扉」や「帝専」(帝国女子専門学校)の文字が書かれた窓ガラスが残る。本橋明彦理事は「帝専時代(1948年以前)のガラスでしょう。昔のガラス特有の歪みもあり趣があります」と話す。茜館の素材の一部は相模原市立博物館へ寄贈する予定だという。
解体後は併設するフランス式庭園も含めて地域や学生の交流拠点として再整備される。風間理事長は「今までお世話になってきた地域。これまで以上に地域とともに歩む学園にしていく」と語った。2026年度中に完成する予定。
一般公開は7月12日(土)、午前10時から午後4時まで。入場無料。直接会場へ。建物内部の見学のほか、学園の歴史パネル展示などが行われる。

旧陸軍通信学校時代から残る扉