JR、横浜市営地下鉄、路線バス(神奈中、江ノ電)、タクシーなどの各種交通機関が乗り入れる戸塚駅。大型商業施設や商店街のほか、戸塚区役所を始めとした公共施設も隣接する、横浜市内でも有数の賑わいを見せるターミナル駅です。
となると、通勤・通学、送迎や買い物で多くの人がアクセスすることにより、駅周辺で交通渋滞はどうしても発生しがち。実際、お困りの方も多いでしょう。「住みたい、住み続けたいとつか」を目指す戸塚区役所などでは数年前からさまざまな改善策を講じて来ました。
地元民らと改善策を話し合う
2019年に設置された、「戸塚駅周辺地区住み続けたいまち・みちづくり連絡協議会」。駅西口・東口周辺の渋滞緩和対策などに向けて策定されたプランを協議するための会です。戸塚駅周辺の8地区の連合町内会長、神奈川中央交通や江ノ島電鉄、タクシー協会などの交通事業者のほか、時間帯によって学生の利用が集中する明治学院大学、さらに、戸塚警察署や戸塚土木事務所などで構成し、改善策の決定から実施までをスピーディに進められる協議会だったことが特徴です。全8回にわたり真剣な議論を積み重ねてきました。

戸塚区役所で開かれていた協議会
このレポートでは西口・東口について以下の順番で紹介していきます。
①どんな課題があったのか。
②解決に向けてどんな対策をしたのか。
③結果、どうなったのか。
では、進めていきましょう!
西口側
●課題は?
戸塚駅西口駅前道路(戸塚駅西口入口交差点~戸塚区役所前交差点)の改善がポイント。主に送迎バスや一般車の送迎による駐停車により、追越車両が路線バスなどの対向車両と接触しそうになったり、自転車がさらに外側を追い越そうとしたり。いつ事故が起きてもおかしくないような状況でした。また、駐停車によって後続車の流れが悪くなり、渋滞発生の原因にも。

駐停車禁止エリア指定前。危険な状況が続いていた
●対策は?
戸塚区などはこの区間(戸塚駅西口駅前道路)を駐停車禁止にすることを考案。区と戸塚警察署が中心となり2020年の春先、1週間にわたり駐停車禁止にする社会実験を行い、有効性を確認しました。規制にあたり、駐停車していた車両が別の道路にシフトするだけでは解決にならないことから、第2バスセンター(元戸塚住宅公園前)を拡充へ(送迎バス乗降場新設、一般車乗降場の拡張)。区役所ロータリー(一般車乗降場、タクシー乗降場)がどなたでも利用ができることをより分かりやすくするために、駐停車する車両を誘導するサイン強化なども合わせて2024年3月末までに実行。その上で戸塚駅西口駅前道路の一部を2024年5月8日から終日駐停車禁止エリアに指定しました。

拡張された第2バスセンターの一般車乗降場
●結果は?
戸塚区を中心に、規制が始まる1年以上前から駐停車禁止を広報などで周知してきたこともあって、スムーズに導入でき、効果もすぐに表れたよう。区担当者は「実際、1,000台以上の駐停車車両が減少したことで、これまで目立っていた駐停車車両はほぼいなくなり、劇的な効果が得られました」と話します。

駐停車禁止エリアに指定された直後。駐停車車両は大幅に減少した
東口側
●課題と対策は、結果は?
課題 | 対策 | 結果 |
戸塚モディに隣接する東口駅前道路の交差点付近での駐停車と、それを避けるためにバスがはみ出し走行をする危険な状況の状態化 | 2023年に「戸塚駅前の通り」の交差点付近にバリケードブロックを設置し、駐停車禁止のゾーンを明確化したほか、中央線の変更、右折レーンの後退などにより、安全性を向上 |
違法駐停車が物理的に停まれなくなったことで、バスの対向車線へのはみ出しは見られなくなり、安全性が向上 |
戸塚駅に発着する路線バス集中による駅前広場の混雑 | 明治学院大学行きの急行便をロータリー内に暫定的に設け、学生の列が一般区民の利用の支障とならないよう配慮。24年7月からは、同広場6番乗場で発着していた県道瀬谷柏尾道路方面を運行するバス路線(相鉄線三ツ境駅-戸塚駅東口間の路線)を、西口の戸塚バスセンター4番乗場へ移設 | 明治学院大学行きの急行便により輸送効率が向上。県道瀬谷柏尾道路方面を運行するバス路線を西口へシフトしたことにより、東口の駅前広場の混雑は緩和 |
タクシー乗場が交通島の中にあり、平面的なアクセスができず市営地下鉄戸塚駅からのバリアフリールートでアクセスしようとすると、異なる場所にあるエレベーターを3回乗り継ぐ必要があり不便 | バス路線を東口から西口に移設したことにより生み出されたスペースを有効活用し、25年3月末から駅前広場のタクシー乗場は駅舎に近く、どこからでもアクセスしやすい場所に移設 | タクシー乗場を駅寄りに移設したことで、地上からも地下からもエレベーターに1回乗ればアクセスできる。シニア層や足の不自由な人などには使い勝手がよくなっている |
「戸塚駅前の通り」(県道203号線)の上倉田交差点を先頭に車が滞留し、一般車乗降場や駅前広場の出口をふさぎ、一時的に交通の流れが停滞 | 「上倉田」交差点は右折車が滞留するための車線が短く、交差点の容量が十分でなかったことから25年2月上旬に右折レーンを約11m延伸して、滞留スペースを増やし、滞留長を削減 | 「上倉田」交差点を先頭とした車両の滞留による長い渋滞列は減少し、駅前広場前の交差点への影響はほとんど生じなくなっている |
【タクシー乗場の移設】
- 以前のタクシー乗場
- 移設後
【上倉田交差点右折レーン延伸】
上倉田交差点では、戸塚駅東口から大船方面へ右折する交通に対する右折矢印の青時間が約6~7秒と短く、多くの右折車両を処理できない信号時間の要因はありつつも、交差点を通過する車両の数に対する右折レーンの短さによる容量不足が課題であることを確認。シミュレーションの結果、右折レーン延伸が有効であることを確認しました。
区担当者は「中期的な対策は一通り実施して一区切りとしましたが、長期的な課題や新たに生じる課題に対しては区民の方のご意見もお聞きしながら、より魅力的な戸塚区にしていけるよう取り組んでいく」と力を込めます。
〇リンク 住み続けたいまち・みちづくり連絡協議会